やはり、“ターゲットとする読者層が明確な本は、頭に、心に、突き刺さる”ものである。
もちろん、様々な読者層にとっても得るものが多い程、内容の濃い本ではあるが、本書を読むことにより最も多くの気づき、学びが期待できるのは、戦略・経営コンサルタント、とりわけ若手のコンサルタントである。(そんな期待から本書を手にしたわけだが、読後、その期待は裏切られることはありませんでした。)
本書で取り上げられるトピックは、トップコンサルタントが抱える(つまりは、クライアントとしての企業経営者にとっての)様々な課題、チャレンジに及びます。プロのコンサルタントとしての仕事への姿勢から今後の日本企業が海外と伍して戦う術まで、対談の内容は多岐に渡ります。その中でも特に、頭に、心に突き刺さったポイントを以下に挙げます。
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組織の実行力が戦略の自由度を決める
(p28-32)
論理的な正解を提示するとクライアントにとって実行が難しく、実行可能な範囲で考えてしまうと結果として不正解となる。JALのケースも戦略合理性と組織風土の狭間の難解なケースだった。
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実行力強化には、リーダーの育成こそが今の日本企業にとって最も効果の大きい施策
(p40,242)
グローバルに通用するリーダーをどれだけ厚みを持って会社として抱えられるか、もっと言うと有能な人材を輩出するような企業を目指すべき
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年功序列を実質的にきちんと解体すれば8-9割の問題は解決する
(p243)
有能な人をきちんと配置すれば、年功制は次第に崩れていき、優秀な若手のモチベーションは上がり、成長速度も速くなり、企業全体の実行能力は持続的に強化される
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経営者にとって重要な事は、自分が下した意思決定を社員に正しいと思わせ、成功に向けて突き進むこと。そのような経営者のリアリティーを理解してこそ真のコンサルタント
(p57-59)
全ての選択肢の中からどの案が最も正しいかに固執してしまいがちなのがコンサルタント。しかし、現実に経営に携わる社長からすると、どの案であれ実際にやってみないと分からないという場合が多い。そんな社長のリアリティーを無視した提言をしたところで、クライアントに心の扉は開いてもらえない。
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3000万円稼げる人が1000万円で満足すれば国は滅びる
(p68-72)
国としても、企業としても、有能なエリートは使い尽すべき。もちろん、それ相応の報酬を与えた上で。3000万円稼がせ、2000万円与え、1000万円納税させるべし。
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世界と日本とではビジネスの時間軸が異なる
(p188-191)
海外と異なり、日本の商習慣は繰り返し(リピート)、継続を前提としており、時間軸は長い。外資系にありがちであるが、それを無視したグローバル・スタンダードの日本への押しつけは決して成功しない。ボーダフォンが日本市場を攻略できなかった理由もここにある。
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真のグローバル化とは日本の土台をしっかり持つこと
(p195-198)
単に無国籍なものが幅を利かせたり、海外の受け売りといった事ではなく、真のグローバル化とは自国の土台(ファウンデーション)をきちんと持つことが前提である。そうすれば、必然的に他国からも必要とされる企業、人材(真のグローバル戦力)となり得る。
コンサルタントという職能を極めた二人の言葉は深く、重い。自ら経験を伴い、それが腑に落ちるには、私自身まだまだ経験的にも時間を要するでしょう。しかし、二人が実際にコンサルティングを行った企業変革のケースを数多く引用した上での主張は力強く、一流の視点を垣間見ることができただけでも一読の価値がありました。
さすが、日本を代表する二人のトップコンサルタントだけに、ここまで赤裸々な、ガチの対談も珍しく、その濃密な内容を示唆の富んだ対談本としてまとめ挙げた本書は、繰り返しますが、若手コンサルタント必読の書であることは間違いありません。
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