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December 31, 2021

社会的開拓者(Social Pioneer)のための栄養ドリンク LIFE SHIFT2(ライフ・シフト2)

前著「LIFE SHIFT」から5年。

その間、平成の時代が終わり令和が幕開けをし、誰も予期しなかった新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが世界を一変しました。

前著が言っていた変わるべき時っていうのは、遠い未来の話ではなく、差し迫った今の話だと実感させられた本当に大きな変化が訪れた5年間でした。

続編「LIFE SHIFT2」は、そんな変化激しいこれからの時代、人間として開花する(長寿化と技術進歩を敵に回すのではなく味方につける)ためにはどんな行動をとるべきか教えてくれます。多くの研究や論文の裏付けを元に、不透明な未来を明るく照らし、人生100年時代を生きる活力を与えてくれる栄養ドリンクのような本でした。

本書は、いくつかの新しい視点を与えてくれました:

***

①お金よりも大切にしたいアセット
長寿化の時代ではほんとうは長く働く必要があるのに、昨今巷では、FIRE(Financial Indipendence, Retire Early)が流行っている。が、皮肉にも、経済的独立っていう概念そのものがお金に縛られている考え方なんだよなぁ。

ダライ・ラマ14世はこう述べた。
「人は金を稼ぐために健康を犠牲にし、健康を取り戻すために金を犠牲にする。また、未来を心配しすぎるあまり、現在を楽しめない。その結果、現在を生きることも、未来を生きることもできないまま、真の意味で生きることがないまま死んでいく。」

100年時代を生きていくのに、お金は必要なものではあるが、お金と幸せは無関係である。幸福度により影響を与えるのは「温かい人間関係」である。

金銭面で未来の自分を苦境に立たせるのは避けたいが、それと同じくらい、学びの時間、移行を成功させる活力、健康、人間関係などを欠いた色褪せた人生を送ることも避けたい。

②年齢の捉え方
年齢に対する考え方を改める。

産まれてから何年経ったかという「暦年齢」ではなく、今の高齢者はこれまでになく若いという"年齢のインフレ"を踏まえた「実質年齢」ベースで物事をとらえるべき。
 
例えば、生後40年経つ人同士を同じ暦年齢だからといってひとくくりにするくらいなら、(死生学的年齢が同じ)余命50年の人同士をセグメント化して考える方が、よっぽど的を得ている。

アメリカの老年従属人口指数(一人の高齢者を何人の現役世代で支えているかという指数)も、年齢インフレを調整してきちんと分析すると、若者負担は増えてきているのではなく、むしろ下がってきている。

また、社会保障についても、平均寿命を過少評価してしまう「ピリオド平均寿命」に基づくのではなく、医学の進歩による死亡率低下を考慮した「コーホート平均寿命」に基づき、ちゃんと長く生きることを踏まえて再設計すべき。

ミレニアル世代とかZ世代とか、世代に呼称がつけられ始めたのと、3ステージの人生モデルが形成されたのは同時期ということからも明らかだが、そんな世代のとらえ方はオワコンである。

ついつい「若い人たちは...」って言ってしまうが、Age Harassmentはもってのほかということも忘れず肝に銘じたい。

③企業の立ち位置
人の働き方の自由度が高まったことにより、企業は従業員との関係よりも、顧客・株主との関係を重視するようになってきてしまっている。。

仕事上の学びの機会(人材開発)においても、その責任は企業側から従業員側に移ってきている。

④新時代の学び
長寿化に伴い生涯学習が不可欠となる。人生序盤の教育は特定の知識・スキルの獲得よりも、ずっと学び続けられるための土台を作るべき。また、シンボルとしての学位の価値は下がっていく。

生涯に渡って学び続けることになるが、子供と大人における学習の大きな違いは、大人においては「学習獲得」よりも、過去の成功体験や染みついた慣習を捨てる「学習棄却」が大切になってくる。

また、AI等の技術発展が進む世界では、先端技術の知識をキャッチアップすることも大事だが、それよりも、良きコーチたる能力、人を焚きつける術、心身状態への気配り、傾聴力、ビジョン発信等の人間的スキルの方がより重要になる。

新時代の学びって、いずれも言うは易く行うは難しなことばかりである。
***

マルチステージの人生を送っていくということは、数多くの岐路が待っている人生でもある。分岐点に立った時、大きな変化が訪れた時、将来の見通しに悩んだ時に、イキイキと人間らしい人生を歩んでいくためにも、この本に立ち戻りたいと思いました。


アンドリュー・スコット、リンダ・グラットン
LIFE SHIFT2(ライフ・シフト2)

September 12, 2018

知能の限界の壁を量子がすり抜ける!(量子コンピュータが人工知能を加速する)

次世代計算機の最有力候補として今とってもアツい量子コンピュータ(Quantum computer)。私が初めてこの言葉と出会ったのは20年前、当時大学で共に物理を学んでいたクラスメイトからでした。
(こう言うと怒られますが)彼はあまり授業に来ずに、コンピュータ関係の仕事に没頭し、たいてい見かけるのは飲み会の席。忘れもしません、酔った席でいつも彼は言っていました。「量子コンピュータは計算機を根本から変える力がある」「その研究がしたいから西森研に入る」と。

知識も未来への洞察力も持ち合せていなかったその時の自分は、なんか凄そうだけど、その実現には100年かかるんじゃない?とか、
もしそんな超高速な計算機ができたとしても何をもたらしてくれるの?とか、雲を掴むような話としてしか記憶になく、「量子コンピュータ」という言葉と、可能性に対する彼の熱意だけが記憶に残りました。


それから約15年後、私だけでなく多くの研究者の予想を裏切って、2011年カナダのD-Waveという企業が量子コンピュータの製品化を実現しました。
当時、学界では、量子コンピュータはそんなにすぐに簡単に作れるはずがないと言われていて、D-Waveも得体の知れない怪しい物体として、研究者は近づいちゃいけない対象として疑いの目で見られていました。

潮目が変わってきたのは、2015年、D-Waveをお試し購入したGoogleとNASAがその性能評価を行い発表したのです。量子コンピュータのいち方式である量子アニーリング方式を採用したD-Waveマシンで、"ある特定の問題"を解いた場合、従来のコンピュータと比べて、D-Waveは1億倍高速だったと結論付けたのです!1
10倍でも100倍でもなく、1億倍速いという結果を受け入れるには、「得体の知れない怪しい物体は、本当に量子力学の原理に基づきそれを具現化した量子コンピュータである」と結論付けるしかありませんでした。
学生だった当時、自分が生きている間に実現するとは到底思えなかった世界が現実になったことに驚くとともに、人類の英知と科学技術の進化に本当にワクワクします。そして、その量子コンピュータのいち方式であり、現在唯一製品化を果たしている量子アニーリング方式を提唱したのは、他でもない彼がその理論の可能性に惚れ込んだ西森秀稔先生だったのです。

そんな感慨深い思い出から、西森先生の著書「量子コンピュータが人工知能を加速する」を手に取りました。
「式を使わずに量子コンピュータを語るのは両手両足を縛って徒競走に出るのに等しい」とあとがきに書かれている通り、数式を一切封じて、理論を説明するのは骨が折れる作業だったことと思います。それでも、一般読者にも分かるように目線を合わせ、丁寧に量子力学の基礎から解説してくれた本書を読んで、夢が現実になった量子コンピュータに更に期待を膨らませることができました。

量子コンピュータとは、情報科学の深化に伴い人類に立ちはだかる問題「計算能力の限界」に対する、ポストムーア2の方向性を指し示す一つの道筋であり、計算機科学における真のイノベーションとなる可能性を大いに秘めています。

「5年後には北米で一大産業が立ち上がる可能性もある」

コンピュータがこの世に登場してから70年。これまでの計算機とは全く異なる原理の新たな計算機が生まれようとしている瞬間に立ち会える喜びと、それが私達の暮らしにもたらす可能性を考えるだけで心が踊ります。

量子コンピュータとは?っていう原理や性能、課題については、本書やインターネットの解説に譲るとして、量子コンピュータの扉を開いた、革新的理論の発案者である西森先生の物理学者としての視点と考察が、本書の至る所にゆらいでいました。特に興味をもった点について触れたいと思います。

①理論と応用がほとんど背中合わせの研究分野
理系の世界は、理論と応用が良くも悪くもしっかりと分かれています。日本の大学において象徴的で分かりやすいのが、「理学」と「工学」が学部という組織で分け隔てられている点です。
「サイエンスとエンジニアリングは別物で、基礎的な科学を研究するところと、実社会への応用を研究するところがはっきりと線引きされている」と、言います。もちろん、区別されている事には一長一短あるのですが、量子コンピュータの世界は、理論と応用の距離が近い領域で、境界のあいまいさが特徴です。
西森先生は、物理の世界で言う「理論屋さん」です。彼の武器は、紙とエンピツ。巨大な実験設備とかは「実験屋さん」の職域です。そんな西森先生が、頭だけで机上で、発案した理論が、たった15年も経たない内に、現実モノとなり世の中に登場することができたのは量子の性質(=自然現象)を上手く、計算に利用したからです。
最近は生物や化学の分野で、大学発の起業家など新興ベンチャーが立ち上がる例は多くみられますが、机上色がより強い物理や数学の学問領域から、直接的に世界を変えるような新技術が登場するようになってきたことは、大きな変化です。社会や世の中がモノなど有形よりも情報やデータなど無形に重きが移ってきている一つの表われなのかもしれません。

②狙ってできることではない。純粋な学問的な興味が革新的イノベーションにつながる
世界中のIT企業がこぞって先行開発を競う量子コンピュータ。
「量子アニーリングはもともと社会の役に立つかどうかは意識しない、純粋に学問的な興味から生まれた」と、先生は言います。
「本当に世の中が変わるブレイクスルーは、損得勘定や打算的な計画などからは決して生まれません。そんなことは一切気にせず、好奇心の赴くまま我を忘れて没頭する集中力の中から生まれてくる」と言います。
別の例ですが、「ニュートリノの観測」でノーベル賞を受賞した小柴教授は、ノーベル賞受賞インタビューにおいて、「その研究は何の役に立ちますか?」というメディアからの陳腐な質問に対して、快活に「全く役に立ちません」と断言したそうです。
損得勘定を前提していると、その結果出てくるものは想定の範疇を大きく超えることはありません。その意味においても、無邪気な基礎研究の大切さが、この量子コンピュータの世界でも実証されました。研究機関における成果に対する考え方だけでなく、西森先生はこう言います。「1年や2年の短期的なリターンを追求するのではなく、中長期に渡る大胆な投資をするダイナミズムを、かつてのように日本企業に取り戻してほしいと願っている。」と。

③日本の強みと更なる飛躍への処方箋
日本の研究者にとって、精緻さ、厳格性は強み。これまでも緻密さを活かして新しい理論や発見を打ち立ててきました。ただ、緻密さにこだわりすぎると社会への好影響の機会とその循環による研究環境の進歩のチャンスが失われる、と本書は指摘します。
また、日本は(最近はその衰えを危惧する声もありますが、)基礎研究力はまだまだあるものの、その製品化力が不足しているそうです。その理由の一つは、世界と比べて、起業家精神の厚みの違いと、破天荒なベンチャーを支える太っ腹な投資家の不在、だそうです。D-Waveについては、そんな条件が揃っていたからこそ、100年かかるといわれていた夢の物体がわずかの時間で現実のモノとなったのです。
量子コンピュータの分野に限らず、将来日本がキーとなる新技術のムーブメントの中心であり続ける為には、大学や研究機関からビジネスが産まれる素地が不可欠だと思います。
例えば、理系の修士カリキュラムでMBAにあるような「ベンチャー企業と起業家精神」といった科目を必修授業とするとか、大学職員に対しても柔軟な勤務条件など自らがビジネスを立ち上げられる事業化支援策が必要だと思います。サイエンスとビジネスの融合なくしては夢はカタチになることなく夢のまま終わってしまうのです。

突如現れた、人類の知能の地平線を押し広げる可能性がある量子コンピュータ。その原理の発案者であり、今持って最前線で研究を続ける西森先生は言います。

「D-Waveが、量子コンピュータ開発の新たな方向性を示して大きな流れを生み出したことは間違いない。だが、ゴールはまだ遠い。新たな試合のルールが分かってきたところであって、本番はこれからだ。」

興奮冷めやらぬまま、今週土曜日その最前線に触れる為に、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)主催の「次世代計算機講座」に参加します。次回は最前線について書きたいと思います。

続く...


1. D-Waveの量子コンピュータは「1億倍高速」、NASAやGoogleが会見
2. インテル創業者の一人であるゴードン・ムーアが提唱した「半導体の集積率は1年半毎に倍になる」という予測。その「ムーアの法則」の限界説が議論されている


量子コンピュータが人工知能を加速する
西森秀稔・大関真之

December 19, 2016

あなたの子供は100歳まで生きるかもしれない LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

「日本では2014年産まれの子の半数が109歳まで生きる」

100歳を超えると国からありがたい銀杯が貰えます。でもそんな銀杯もこれまで純銀製だったのが今年、銀メッキに格下げされちゃいました。この調子でいくと、2100年くらいには賞状一枚すら貰えなくなってるでしょう、きっと。

「100年ライフ」

遠いようで遠くない、けっこう身近に迫ってきてるんですよね。人生100年時代。
長くなる人生を災いではなく恩恵にするためは、これまで以上により大切になることがあるとこの本は言います:


***

①選択肢の価値

不透明で変化が激しく、将来が予見しにくいような長い人生を生きることになると、
「選択肢を持っておく」ことがより重要になるそうです。

より多くの「聞いてないよー」級の変化を経験することになるので、そもそも、その時に「選べる」状況にあることが有利に働きます。
選択ミスをした場合とかも、長寿化にともない尾を引く期間も長くなるから、決断はどんどん先延ばしにされることでしょう。「本当に相性がいいものと出会うまでは」と皆、慎重になります。
晩婚化とかはそんな影響なのかもしれません。

金融の世界では選択肢はオプション(将来の決められた期日に予め決められた価格で特定の資産を売り買いする権利)といって値段がついて取引されています。
オプションの価格は幾つかの要素で計算されます。期間が長かったり予想変動率が大きかったりする程、オプション(選択肢)の値段は高くなります。
長くなったり、大きな変化が待ち受けていたりすると、選択肢の価値が増すってのは、金融の世界も人の人生も一緒なのかもしれません。


②自分探しの時間と経験

著者が「エクスプローラー」と呼ぶ自分探しの期間と経験が、後の人生を形作る大切な人生のいちピースになるといいます。

人間を人間たらしめる、遊びや即興。
一見無駄にみえるそうした行動によって、自らの価値観に気付いたり、アイデンティティや役割を考えます。目的の有り無しに関わらず、たとえ遊びであっても、育ってきた環境と全く異なる環境にどっぷりと身を置いて、他人の視点で考えたり共感する。その経験を通じて自分の軸を築いていくそうです。

大きな変化を柔軟に生き抜くための屋台骨をしっかりさせる為にも、自分探しのステージは今以上に大切になるでしょう。エクスプローラーは何もティーンエージャーといった未成年の時期に限らず、18-30歳とか、40代半ば、70-80歳の時期などに適している、と著者は言います。

我が身を振り替えると、大学卒業後アメリカをふらふらしていた時期がエクスプローラーのステージだったのかもしれません。(価値観、アイデンティティを発見したかは、さておき。。)
放浪の旅、モラトリアム、遊学を頭ごなしに否定したり、大人目線で効率を押し付けたりしないように気をつけようと思いました。


③余暇の配分

50年ほど前の1966年、日本の男女合わせた平均寿命は約70歳でした。

東京オリンピック直後の輝かしき時代。家族やプライベートの時間も顧みず身を粉にして働いた時代。定年まで務め上げ、リタイア後の残り10〜15年の余生を全く働かず余暇として過ごす、という生き方も全く違和感なく、ふつーだったかもしれません。
(ちなみに、当時は55歳以前が定年の主流でした。30年前の1986年に60歳定年の努力義務化の法律が制定。「人生長くなればなる程、働きましょう」なのでしょうか)

でも、そんな嘗てのようなリタイアを堺として100%仕事、100%余暇というモデルは、100年ライフにおいてはうまく機能しないでしょう。だって、60歳にリタイアしたとしても、余生が40年も残ることになります。長期化したアフターリタイアメントを楽しむには経済的にも身体的にも厳しくなるのは目に見えています。

つまり、余暇の多くを引退後にとっておくのではなく、人生全体に分散させましょう、と著者は言います。
そして、(特に若い期間に)散りばめた余暇はリクリエーション(たんなる娯楽)でなく、リ・クリエーション(マジメな勉強、資格取得に関わらず、上記のエクスプローラーも含む) として自分への投資に使った方がいいよ、って言ってます。
投資と一緒でまさに、余暇の長期分散投資です。働いてもらって、リターンをもたらしてもらう大切な資産という意味において、お金と時間は同じなのかもしれません。

この節を読んで思い出したのが、昔読んだノマド研究家 大石哲之さんのブログの「人生の時間軸を横に倒せ」のエントリーでした。
全く同じことがこのブログには綴られていて、「余暇の分散」を「人生の時間軸を横に倒す」と表現しています。

ちなみに、人類の長い歴史を振り返ると、テクノロジーの進化とか経済の豊かさとかの理由で労働時間は減ってきていて、その分余暇は増えてきているそうです。エンターテイメントなんて概念や産業が出て来たのも比較的最近のことだし。長寿化に伴い存在感を増す余暇をどういうふうに使うか!?っていう問題は、どう働くかと同程度かそれ以上に大切になるでしょう。

***


この本はその他いろいろ面白いことについて述べていて、
シェアリングエコノミーがもっともっと幅を利かせるようになり、「持つ」ことの意味が変わる、とか。

この本の予測が正しければ、自分も半分の確率で98歳まで生きます。
さすがに3分の1は過ぎちゃったけど、それでもまだまだ残された時間は多く、
かなりの確率でこの本が予想する未来に突入していきます。

ましてや、自分の子供の世代になると、それはもっと現実味を増すでしょう。
長寿「100年ライフ」を災いでなく恩恵にできるよう、ちょこっとずつ、行動、考えをシフトさせていこうと思いました。



リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット
LIFE SHIFT(ライフシフト)

February 21, 2016

今年も的中なるか?奇才データアナリストが挑む米国大統領選挙
-US presidential election 2016-


タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」にも選ばれた奇才の人。

ネイト・シルバー

彼は膨大なデータを用い、政治選挙やプロ野球選手の将来を予測する。
ブラピ主演の映画「マネーボール」の元ネタの人。

スゴいのは、彼の予測の圧倒的な精度。

過去の米国大統領選挙において、
2008年 50州中49州的中
2012年 50州中全州的中 ...(゚д゚)

今年も既に予備選挙が各州で始まってるけど、
そのひとつひとつも彼は予想し、
随時結果をウェブサイト上「FiveThirtyEight.com」で公開してます。


* * *

そもそも米国大統領選挙の仕組みもよく分からないし、
ましてや予想の背後にあるロジックもちんぷんかんぷん。。
彼のサイトを読み、理解することすらままならないです (´Д` )

が、

どうやら現時点では、予備選挙においては、

ヒラリー・クリントンが圧勝で民主党候補となり、
(民主党ほど圧倒的ではないものの)ドナルド・トランプが共和党候補として指名される

と、彼は予測します。

注目の、本選挙の各州における予想については、
「まだ精度よく予想するには時期尚早」2015年11月Salesforce World Tourにて
って言ってるけど、
予備選挙が終わる7月過ぎには次期アメリカ大統領について、
自信を持って何かを予言してくれるでしょう。きっと。


* * *

そんな彼が予測の極意を惜しみなく紹介した著書『シグナル&ノイズ 』で
興味深いことを述べています:

「膨大な情報には、より多くの役に立たない”ノイズ”が含まれ、真実 = ”シグナル ”が必ずしも含まれているとは限らない」

膨大なノイズの中から本当に意味のある情報だけを救い出すのがキモだってことですね。


さらには、
「数字自体は何も語らない。語るのは私達だ」

分析のインプットもアウトプットもそれ自身は主観や恣意性の入り込む余地のないハードファクトだが、
それを咀嚼し、表現し、行動に活かしていくのは、人間だけがなせる技ってことですね。


* * *

今年の年末に行われる大統領本選挙。

第45代アメリカ合衆国大統領に誰がなるのか?
そして彼は今回も、世の政治評論家の誰よりも正確に選挙結果を予言することができるのか??



シグナル&ノイズ 天才データアナリストの「予測学」

September 9, 2015

「シンプルに考える」森川亮さんがシンプルに語りかけてくれた事


元LINE CEOで、現在新たにC Channelという動画配信メディアを立ち上げた、森川亮さんが昨日来社され、お話を聞くことができました。

とっても刺激的で、ハッとさせられる内容のお話満載だったので、質疑応答が途切れることがありませんでした。著書「シンプルに考える」に書かれていないような、横道話や生煮え話も聞くことができました。



--------会場からのQと森川さんのA--------

[シンプルについて思うこと]
質問:著書「シンプルに考える」に書ききれなかった事とは?
「幸せとは何か?」について考えるところがある。幸せと感じる一歩手前の状況をいかに保つか。人は幸せと感じた瞬間に、甘んじる、守ろうとする。チーム、組織、自分がコンフォートゾーンに入る手前で突き放す勇気が必要。


質問:シンプルにしすぎて失敗したことはあるか?
「基本、社員に嫌われてるんですよね。」 ダイレクトに言い過ぎてしまう癖がある。


質問:どうしても複雑に色々考えてしまう人はどうすれば良いか?
人に好かれることを捨てる。人に好かれようと思ってすることは表面的。好かれなくてもいいと思い、本気で相手と向き合った先に、本当に好かれるような関係を築くことができる。


[人について思うこと]

質問:変化を受け入れる姿勢は、元から?それとも経験や訓練で身に付けたもの?
初めはそうでなく、変化に対してイラッとしたこともあった。が、変化に対してどうして自分がそう感じるのかよく考えた結果、変化を機会と捉えた方が、上手く回ることに気がついた。


質問:失敗を楽しむにはどうすればよいか?
失敗は楽しくない。楽しんでいるようでは、チーム、会社、ユーザーに失礼。意味のある失敗を積み重ねることが大切。その為には、仮説、論拠を事前に考え尽くす。


[ビジネスについて思うこと]

質問:「ビジネスにおいて、リスクやコンプライアンスに配慮することはスピードを遅くする」と言うが、それらを気にせずに失敗した経験は?
何も考えていないわけではない。Googleはヤバいことを結構やっている。Yahooは優等生だから危なすぎる橋は渡らない。LINEは両方を見て、その中間をとった。要はベンチマーク。


質問:大企業はダメっぽく聞こえてしまうが、そんな大企業へのアドバイスは?
大企業の一つのチャレンジは、計画者と実行者が別々だと上手くいかない。一緒であるべき。その為には、社内にいくつもベンチャー事業部をつくるイメージ。


[日本について思うこと]
質問:今の日本において森川さんが課題と思うことは何ですか?
メディアのあり方。まだまだタブロイド型。情報を一方通行的にばらまくのではなく、コミュニケーション型のメディアを作りたい。


質問:技術偏重など日本がガラパゴスを脱却し、成長するには?
大企業には率直に物を言う人が少ない。不要な配慮がある。日本人は人の気持ちを汲むとされるが、本当の意味で人の気持ちを分かっている日本人は少ない。色々な国、文化の人と働く上で、様々な価値観を受け入れ、気持ちを尊重することが必要。また、人(ユーザー)の気持ちを、真に製品・サービスに落とし込むこともヘタ。


質問:日本を元気にするにあたってのツボや課題は?
教育と医療。日本人はみんな先生になりたがらない。先生を魅力的と感じてもらう必要がある。産業としては農業とエネルギー業。日本の持ついいものをITで活性化できる余地がまだまだある。



会場からの質問にひとつひとつ、歯に衣着せず端的に面白く答えていく姿が印象的でした。本を読み進めていくと溢れ出すように質問が湧いてきたのですが、2つだけ伺いました。

私の質問:「ユーザーが本当に求めているもの」を生み出すことだけに集中する、というがどうやってユーザーの求めるものを突き止めるのか?
ユーザーに一番近い、現場の人間に企画立案など権限移譲する。ユーザーの声の裏にある本質を考え抜く。最近はC Channelの求心力である「カワイイ」とは何かについて考えている。


私の質問:なぜLINEを辞め、C Channelを始めようと思ったか?
LINEはある程度成長してしまったので、より成長スピード、ダイナミクスが感じられる仕事を求めて。また、若者に活躍の場を与え、メディアのあり方を変えて、日本を元気にするビジネスをまたいちから作りたかったから。--------

ことごとく世間の常識と逆をいく森川さんの考えや行動は、決して奇をてらって逆張りをしている訳ではなく、シンプルに本質を自分の頭で考え抜いた結果なんだなと、感じました。




シンプルに考える 森川亮
最近幸せと感じて甘んじているな、と思う人にオススメです!

May 25, 2015

ネット好きもそうでない人もみんな「インターネット的」


僕が初めてインターネットを使ったのは、大学の入学祝いに買ってもらったノートパソコンを電話回線に繋いだ時でした。

18年も前のことなのであまりよく覚えてないのですが、その当時のインターネットの使い道といえば、
PostPetの愛犬が友達のパソコンと行ったり来たりするのを楽しんでいる、くらいなものでした。


それとほぼ同じ時期、1998年に「ほぼ日刊イトイ新聞」は始まりました。
主宰の糸井重里さんは、それから一日も休まずにインターネットを介して情報発信を続けています。
「ほぼ日刊イトイ新聞」創刊から3年後の2001年に書かれた本書には、「インターネットの可能性とは?」「どのようにインターネットと向き合えば人は幸せ、豊かになれるか?」について、イトイ流の深い洞察に基づく、根源的な考えが綴られています。


インターネットの黎明期に書かれた本にもかかわらず、鋭く予言的に今のネット世界を描いていて驚きでした。


本のタイトルでもある「インターネット的」とは、インターネット自体がもたらす社会や人間関係の変化。それ全体のこと。
例えて言うなら、自動車それ自身ではなくモータリゼーション。自動車の普及とともに変化した世の中や生活、全てのこと。


彼は、世の中のインターネット的変化を3つのキーワードに纏めました:
①リンク  一見不要な情報からのつながりに可能性を見いだせる
②シェア  根源的に人って分け合うことを楽しく感じる(おすそ分けする人は皆に喜ばれるし、信頼もされる)
③フラット  身分、立場だけでなく個人の価値観も平坦、自由になる

あ、あるある。そうなってる。って頷きながら読み進めました。


でもよく考えると、それらってインターネットが登場する前からも日常的に行われてることだったりするんです。
パソコンや光ケーブルがなくたって「インターネット的」であり得る、と糸井さんは言います。

①リンク  池田がこの前の飲み会で、餃子についてつぶやいてたよな。次の日本餃子教会のプロジェクトは池田に任せてみよう、とか
②シェア  食べきれない程みかん貰ったから、お隣さんに分けてあげよう、とか
③フラット  水戸黄門が印籠を隠して諸国行脚していたりとか

昔から行われていたことだけど、インターネットの浸透、発展によって、この3つの変化が社会や世の中の至る所で、加速度的に進んでいくことでしょう。

どんどん誰もが、自由に、繋がって、共有されていく。
グローバル化とか少子高齢化と同じかんじで、インターネット的変化は必ず誰しもに影響を及ぼすことであり、転換期の真っ只中です。

あなたの会社の社食のメニューが突然英語になったり、年金受給開始が70歳に延びたりするのと同じように、
必要、不必要にかかわらず有象無象の情報がシェアされて来たり、つぶやきによってある企業イメージが大きく毀損されたり、娘の彼氏から結婚の挨拶がSNSで飛んできたりもするでしょう。


自動車のように、インターネットは便利な道具として、僕達の生活をこれからも革命的に変え続けていきます。
そんなインターネットも使うのは結局人。インターネット的変化を楽しいと思うか、
疎ましく思うかは、その人の心持ち次第なのかもしれません。
源氏物語に描かれている人の感情の機微って、今の僕達が抱く感情と同じはず。好きだという気持ちを伝える手段は手紙からLINEに変わったかもしれないけど、好きだという気持ちは普遍的でそれこそが人の原動力なのです。



今よりもちょっとだけ、一見どうでもいいようなことを大切にしながら、周囲に敬意を払っておすそ分けしていけたらいいなと思いました。


インターネット的 (PHP文庫)

April 2, 2013

Thinking-by-numbers rules the world


(文末に機械翻訳による日本語訳付き)

   I read the book called "Super Crunchers: Why Thinking-by-Numbers Is the New Way to Be Smart " by Ian Ayres. (その数学が戦略を決める イアン・エアーズ ) This book, written by the professor at Yale Law School and prominent econometrician, showcases many state-of-art statistical approaches for decision making used in this world. They range from prediction of president election to prediction of Bordeaux wine value. Now a days, there is no question around the importance of thinking-by-numbers as well as power of statistics, as the digitalization and data evolution expand rapidly.

   I want to highlight two interesting examples inspired by the book; how numbers-based-approach potentially influences our daily life.

[Predict how likely you will divorce]

   By answering only five simple questions, this calculator gives you a divorce prediction rate based on historical data given by real people and collected as part of the U.S. Census. Of course, the bottom of the result page kindly reminds you how to improve your relationship such as 5 tips for more sex etc.,

   For me, my five year divorce prediction rate was 7%, which is upper limit of average risk. Maybe I should look into one of those improvement suggestions :)

[Isabel  The diagnosis checklist]

   Isabel is the leading company to bring science to medical diagnosis. The program emulates real physician’s diagnosis, but using much more vast and recent information available in medical society. By entering age, gender, habitat region and symptoms in the website, just like usual face-to-face diagnosis with a doctor, it lists all potential diseases with information of “common” or “high risk with red flag” diseases including rare diseases. This computer-based-diagnosis checklist is obviously powerful to reduce miss-diagnosis, especially clinician’s overlooking high-risk rare diseases. Theoretically, it is possible to even predict which disease is more or less likely; however, this program is thoughtful enough to reveal minimum information as a support tool for physician’s decision final judgment, aiming at not violating physician’s professionalism, but increasing their acceptance for the program.

   On March 31st, professional Shogi, or Japanese chess, player lost against computer program in public for the first time became a news. This is certainly an accomplishment of thinking-by-numbers powered by sophisticated program. This book made me realize that the big wave has been already emerged and it will change the role of workers in near future, from decision making for problem solving to hypothesis formulation for answering right question.


Google翻訳もまだまだ発展途上ですが、、、統計的学習手法の進化により、プロの翻訳者も顔負けの精度で翻訳ができるようになる日もそう遠くはないはずです。

-------------以下、Google翻訳-------------
 私はと呼ばれる本を読む "スーパーCrunchersを:なぜ思考·バイ·ナンバースマートにするための新しい方法です"イアン·エアーズでは。イェール大学ロースクールの教授で著名な計量経済学者によって書かれたこの本は、この世界で使用され、意思決定のための多くの最先端の統計的アプローチを紹介しています。彼らは大統領選挙の予測からボルドーワイン値の予測の範囲です。デジタル化とデータの進化が急速に拡大していく今日、思考·バイ·数字の重要性だけでなく、統計の電源周りには疑問がありません。

   私はこの本に触発された二つの興味深い例を強調したい、数字ベース·アプローチでは、潜在的に私たちの日常生活にどのような影響を与えるか。

[あなたは離婚するかを予測する可能性が高い]
http://www.divorce360.com/content/divorcecalculator.aspx

   唯一の5簡単な質問に答えることで、この電卓は、あなたに本当の人々によって与えられ、米国の国勢調査の一環として収集された履歴データに基づいて離婚の予測率を与える。もちろん、結果ページの下部には、親切に、このようなより多くのセックス等のための5つのヒントとして、あなたとの関係を改善する方法を思い出させる

   私にとっては、私の5年間の予測離婚率は平均的なリスクの上限は7%であった。たぶん私はそれらの改善提案:)のいずれかになるはずです

[イザベル診断チェックリスト]
http://symptomchecker.isabelhealthcare.com/suggest_diagnoses_advanced/landing_page

   イザベルは、医療診断に科学をもたらすリーディングカンパニーです。プログラムは、実際の医師の診断をエミュレートしますが、医療社会の中で利用可能な多くの広大で最新の情​​報を使用しています。ウェブサイトでは、年齢、性別、生息域や症状を入力することにより、単に医師といつものフェイス·トゥ·フェイスの診断のように、それは稀な疾患を含む疾患 "赤旗を持つ高リスク" "共通"の情報を持つすべての潜在的な病気を一覧表示。このコンピュータベースの自己診断チェックリストは診断ミスを減らすことが明らかに強力ですが、特に臨床医の見下ろす危険性の高い希少疾患。理論的には、それも多かれ少なかれそうである疾患を予測することが可能ですが、このプログラムは、医師のプロフェッショナリズムに違反していないを目指して、医師の決定最終的な判断のための支援ツールとして最低限の情報を明らかにするのに十分な思慮深いですが、彼らの受け入れを増やすプログラム。

   3月31日、プロの将棋や、将棋で、初めて公の場でコンピュータプログラム敗れた選手はニュースになった。これは確かに洗練されたプログラムによって供給思考ごとの数字の成果である。この本は私には大きな波がすでに出現してきていることを認識し、それが右の質問に答えるための仮説の設定に問題解決のための意思決定から、近い将来、労働者の役割が変更されました。

日本語版「その数学が戦略を決める (文春文庫 イアン・エアーズ)

March 3, 2012

人口津波注意報!?


デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21) 藻谷浩介

本書あとがきより:
「経済を動かしているのは、景気の波などではなくて人口の波、
つまり生産年齢人口=現役世代の数の増減だ」。
この本の要旨を一言でいえばそういうことになりましょう。

ここに本書でも引用されている国立社会保障・人口問題研究所による、
これからの日本を考える上で、目をそむける事のできないデータがあります。


(出典:国立社会保障・人口問題研究所 人口統計資料集による日本の将来推計人口)

情けない国会答弁、
本丸に切り込めない税制改革、
一向に改善をみない出産育児環境整備。

ここでは、何らの抜本的対策が打てなかった場合、
日本の生産年齢人口(グラフ中では15-64歳の赤の部分)、
つまり現役世代の頭数は上図の推計が示す通り、
今後減っていくことが予想されます。

それをふまえた上で、
「人口の波のあおりを少しでも軽減する為に個人が出来る事とは何か?」
について、一個人投資家として本書を読むことでいろいろと考させられました。

影響その①:企業
最も消費が盛んな現役世代が減ることにより、内需が縮小。
供給調整が働かないと、ものがダブつき、価格が下落。
→内需にしがみつく内弁慶型企業の先行きは暗い。(日本株投資するなら海外で稼ぐ外需型の企業)

影響その②:不動産
団塊の世代がこぞって持ち家を夢見たかつての住宅市況は今は昔。
ほんの一部の人気エリアを除いて、不動産需要は縮小する一方。
→長期的には日本の住宅市場は収縮。(不動産に資産価値を見出してはいけない)

影響その③:自助努力
税収の減少。抜本的改革なき場合、
近く国の借金は日本の個人金融資産総額を超える。
日本国、円の信用収縮。
→国の社会保障(年金、保険)にもはや頼れない。(自分年金、自分医療積立が必要。また、資産の海外分散がより重要になる)

影響その④:海外投資
人口の波理論が日本だけでなく、世界に当てはまる普遍的なものであるとするならば、
→今後生産年齢人口が増えるであろう国に投資する。(アフリカ、中東、オセアニア、南米への投資を検討する)


(出典:List of countries by population growth rate、黄色になるほど人口増加率は高い)


影響その⑤:自己投資
現役世代の減少により、働き手・消費者ともに減少。
企業の淘汰がより進む。
→モノ・サービスの需給が縮小することで、
金融商品への投資よりも、自分への投資の方が効果的かもしれない。
人的資本への投資効率が、物的資本へのそれを上回るかも。つまり若いうちにたくさん学ぼう。自己投資のリターンは測れないので、実感に乏しいとは思うが。。


想定が悲観的なので、日本人として半ば非国民的な後ろめたさもあります。
ただ、背に腹はかえられません。
それくらい、このグラフが示すこれからの時代というのは
日本にとって受難の道です。

長期で資産運用を考える一個人投資家にとって、
非常に考えさせられる一冊でした。

デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21) 藻谷浩介

February 12, 2012

本を贈りあえる仲


友人に本をプレゼントするのは難しいものである。
(ここでの友人とは、同じ趣味をきっかけとして知り合った友人等、
興味が局所的に一致する友人関係でなく、ふつーに知り合った友人)

「あの人にぜひこの本を読んで欲しい」という純粋な善意をして本をあげても、
読んでもらえなかったり、感想のキャッチボールが返ってこなかったり、
ということもめっぽう多い。
そんな時は結構がっかりするものである。
本をプレゼントすることは
「本の主旨に自分の太鼓判を押し、それを貰い手に強いる」行為である。
その“思想のプッシュ”が見事貰い手のツボにはまればいいが、
はまらない事の方が多い。
だから私自身、本を人にプレゼントしたことは今までもほとんどと言っていい程ない。
本をプレゼントしたことのある唯一の人と言えば、
そんな思いを込めた私のノーコントロールの投球も寛容に受けとめてくれる、
真に気の知れたキャッチャー(友人)くらいなものである。


そんな気兼ねの無いバッテリーを長年組むオーストラリア在住の友人から
を頂いた。

衝撃的さをあえて演出する奇をてらった予言や、
根拠の乏しい独自の理論など、突っ込みどころももちろんある。
しかし、日本人へのエールがつまった全編を読み終えるころには、
そんなつっこみたかった気持ちはある種の爽快な読後感に変わっていた。


興味を持ったいくつかのポイントについて:

[教育論]
(将来の不可避な少子高齢社会を踏まえて、)子供のことを考えるのであれば、もう日本には未来がないと、海外に移り住んでいく力を今から養っておくのがよい。(中略)どこでも生きられるような教育をすればよい。P103

逞しくも日本を出てオーストラリアで仕事をするその友人の姿が、重なる。

[会社論]
(会社の短命化を踏まえて、)「会社」のコンセプトがほぼ寿命を終えるのは、2024年頃。
P136

会社という「器」に囚われることのない働き方が主流になるのでは、という考えは昨今のノマドと流れを同じにする。12年後いきなり会社が消滅するというわけではなく、カセットが徐々にCDに置き換わったように、働く「器」にも製品ライフサイクルが存在し、その波がそれくらいのタイムスパンでおとづれるという主張。NPO、社会起業家なども次世代の「器」に当るのかも知れない。

[企業論]
定年後も働かなければならない時代、
会社という「器」が持続的でない時代、
再就職先を見つけるのが困難な時代、
40代になったらライフワーク(定年を持たず余生をかけて自ら熱中できる仕事)を始められる力を持つべき。起業もそのひとつ。(p233)


数々の教育プログラム(フォトリーディングやマインドマップ)の日本への啓蒙により
成功を収めたかのように見える著者であるが、
起業の失敗や癌との闘いの経験を通じた、
短視眼的な見方ではなく、
将来を、日本を、達観したアドバイスに満ちた本。

想像の範疇を出ないが、きっと友人は著者と同じそんな思いを、
このプレゼントに託して遠く南半球から届けてくれたのだろう。 
どうもありがとう!

January 15, 2012

若手コンサルタントへの厳しくもアツいメッセージ



やはり、“ターゲットとする読者層が明確な本は、頭に、心に、突き刺さる”ものである。

もちろん、様々な読者層にとっても得るものが多い程、内容の濃い本ではあるが、本書を読むことにより最も多くの気づき、学びが期待できるのは、戦略・経営コンサルタント、とりわけ若手のコンサルタントである。(そんな期待から本書を手にしたわけだが、読後、その期待は裏切られることはありませんでした。)

本書で取り上げられるトピックは、トップコンサルタントが抱える(つまりは、クライアントとしての企業経営者にとっての)様々な課題、チャレンジに及びます。プロのコンサルタントとしての仕事への姿勢から今後の日本企業が海外と伍して戦う術まで、対談の内容は多岐に渡ります。その中でも特に、頭に、心に突き刺さったポイントを以下に挙げます。


-       組織の実行力が戦略の自由度を決める (p28-32)
論理的な正解を提示するとクライアントにとって実行が難しく、実行可能な範囲で考えてしまうと結果として不正解となる。JALのケースも戦略合理性と組織風土の狭間の難解なケースだった。

-       実行力強化には、リーダーの育成こそが今の日本企業にとって最も効果の大きい施策 (p40,242)
グローバルに通用するリーダーをどれだけ厚みを持って会社として抱えられるか、もっと言うと有能な人材を輩出するような企業を目指すべき

-       年功序列を実質的にきちんと解体すれば8-9割の問題は解決する (p243)
有能な人をきちんと配置すれば、年功制は次第に崩れていき、優秀な若手のモチベーションは上がり、成長速度も速くなり、企業全体の実行能力は持続的に強化される

-       経営者にとって重要な事は、自分が下した意思決定を社員に正しいと思わせ、成功に向けて突き進むこと。そのような経営者のリアリティーを理解してこそ真のコンサルタント (p57-59)
全ての選択肢の中からどの案が最も正しいかに固執してしまいがちなのがコンサルタント。しかし、現実に経営に携わる社長からすると、どの案であれ実際にやってみないと分からないという場合が多い。そんな社長のリアリティーを無視した提言をしたところで、クライアントに心の扉は開いてもらえない。

-       3000万円稼げる人が1000万円で満足すれば国は滅びる (p68-72)
国としても、企業としても、有能なエリートは使い尽すべき。もちろん、それ相応の報酬を与えた上で。3000万円稼がせ、2000万円与え、1000万円納税させるべし。

-       世界と日本とではビジネスの時間軸が異なる (p188-191)
海外と異なり、日本の商習慣は繰り返し(リピート)、継続を前提としており、時間軸は長い。外資系にありがちであるが、それを無視したグローバル・スタンダードの日本への押しつけは決して成功しない。ボーダフォンが日本市場を攻略できなかった理由もここにある。

-       真のグローバル化とは日本の土台をしっかり持つこと (p195-198)
単に無国籍なものが幅を利かせたり、海外の受け売りといった事ではなく、真のグローバル化とは自国の土台(ファウンデーション)をきちんと持つことが前提である。そうすれば、必然的に他国からも必要とされる企業、人材(真のグローバル戦力)となり得る。


コンサルタントという職能を極めた二人の言葉は深く、重い。自ら経験を伴い、それが腑に落ちるには、私自身まだまだ経験的にも時間を要するでしょう。しかし、二人が実際にコンサルティングを行った企業変革のケースを数多く引用した上での主張は力強く、一流の視点を垣間見ることができただけでも一読の価値がありました。

さすが、日本を代表する二人のトップコンサルタントだけに、ここまで赤裸々な、ガチの対談も珍しく、その濃密な内容を示唆の富んだ対談本としてまとめ挙げた本書は、繰り返しますが、若手コンサルタント必読の書であることは間違いありません。

April 30, 2011

「書いて生きていくプロ文章論」の溢出効果に感謝!


ビジネス・実用書を中心に古典、新刊問わず読み漁る中、久々に思わず感謝したくなるほどの殿堂入りの本に巡り合えました。

過去3000人を超える著名人、成功者の方々にインタビューを行い裏方として数々のベストセラーを世に送り出してきた職業ライターの上阪徹さん(代表作「プロ論。」シリーズ)の本です。今回は自らを表舞台に立たせた、「“自分の考え”を“自分の言葉”で構成した初めての本」です。

この本、そのタイトルには収まりきらない程、多くの示唆に富んでいます。一見するとそのタイトルから限定されてしまうかもしれない一定の読者層だけでは非常にもったいない程、様々な方に読んで頂ければと思い、紹介させて頂きます。

この本をぜひ読んでほしい人:
・ 文章を書くことを生業にしている人はもちろん、趣味でブログやメルマガ、ホームページを書いている人
・ 仕事としてインタビューや取材を行う人はもちろん、普段自分のコミュニケーションに一方通行を感じていて聞き上手になりたいと思う人
・ プロと認められる為に努力をしようとしている人はもちろん、社会人経験もそこそこ、仕事に慣れてきて行き詰まりを感じ始めている人


第1章から3章までは文章の心得、第4、5章はインタビュー(広義での聞き方)の心得、第6、7章は上阪さん本人のプロとしての仕事論という構成です。

本書の一番の良いところは、文章の書き方を題材としてその心得を丁寧、平易に自身の経験に基づいて説明してくれている点です。題材はあくまで彼の専門である文章の書き方についてですが、丁寧に簡単にかかれている為、その主旨は普遍化され、読み手に様々な示唆を与えてくれます。

本書中盤、インタビューの心得の部分などは一見仕事柄取材やインタビューに関わりの無い人にとっては、「私には関係ない」と読み飛ばされてしまいがちですが、そこはさすが職業文章家!その丁寧で易しい語り口により、そこで述べられていることがそのまま、例えば採用面接を行う際の心得として読み替えることができ、非常に多くのことを再確認させてもらいました。

貴重な時間を割いて弊社に面接に来て頂いていることへの感謝。それを体現するにふさわしい身だしなみ。面会者への事前調査と質問の準備。どうしても会話が途切れるときの対処法等。私自身仕事柄、インタビューも行うので直接的にも学びは大きかったのですが、簡単に書かれている故に、インタビューに留まらずその意味するところが読み進める中でどんどん膨らんでいくのがとても刺激的で、爽快にすら感じました。「採用面接にも当てはまるな」とか「そのまま提案営業にも当てはまるな」とか読む間に溢出効果の快感を覚えました。

名著とは、その書かれ方いかんで、読む時によっても読む人によっても、様々な解釈を許し、違った学びを与えてくれるカメレオンのような本の事なのでしょう、きっと。この歳でそんな殿堂入りの本書に出会えたことに感謝をしたいと思います。