March 6, 2010
【MBAの歩き方】 1.MBAを検討するにあたって
MBAを卒業した利点のひとつとして、いまだにそのプログラムの一員であると日々感じることができるということがあります。MBAプログラムの定期的に行われるリクルーティング活動のサポート(説明会・セミナー等での卒業生としてのお手伝い)や卒業生達との同窓会など、卒業後も頻繁にお互いが集う機会がありMBAを核として新たなネットワークがさらに広がっていくという楽しみがあります。そんな中、新たに出会う方々からMBAに関する質問を受けることも多々あるのですが、皆同様な疑問を持っています。プログラムの選定、出願・選好プロセス、学習内容、コスト、ポストMBA等々。これらの疑問の一助となるように、私のMBAにまつわる一連の経験を記録として残し、オープンにしていこうと思います。
1.MBAを検討するにあたって
社会人や妻子持ちの方々も多く対象となるMBAとは費用も時間も労力もかかる人生における一大プロジェクトのひとつです。もちろんその分、得るものも大きいのですが。MBAに行くという大きな“投資”を何の事前検討も無く意思決定を下すということは、間違いとまでは言わずとも、その投資から得られる収益を低減させてしまう恐れがあります。そのような大きな決断である以上、やはり行動を起こす前に一度「どうしてMBAなのか?」ということを深く考え、自らの腑に落とす必要があります。(この棚卸しが甘いと、出願に必須のエッセイの段階で必ず審査官に見透かされ、不本意な結果となってしまいます。)
MBAを志す人には、本音として様々な動機(目的)があるかと思います。例えば、収入を増やしたい、人脈を増やしたい、ビジネス・マネジメントについて学びたい、キャリアチェンジをしたい、将来独立したい、等々。人によって理由は様々だと思います。出願を考えるに当たって、プログラムの特性にマッチした動機(ファイナンスに強いプログラムならファイナンスよりの動機を熱く語る)などは審査官受けしやすいという小手先の術もありますが、この段階での棚卸しの本質はそこではありません。重要なのは、MBAという長く険しい道のりを完走するために、真に納得のできる「骨太の動機」を自分の中にきちんと定めるということです。そのあるなしは後になってMBAから得られるリターンに大きく影響することとなります。出願用のエッセイとして書き起こすには多少の脚色は必要かもしれませんが、ここでの動機固めは別に他人に見せるものではないので自分の中できちんと「どうしてMBAなのか?」を納得ということが肝心です。
私の場合、その軸は「技術者からの脱皮の為、ビジネス・マネジメントの素養を高める」でした。エッセイを考えていた当時、卒業後に今の職に就くなど想像だにしていなかったので、エッセイの内容にはポストMBAまで見据えた具体性はありませんでした。もちろん出願用に脚色をして卒業後の自分をでっちあげることもできたのですが、そこは正直に不確定なものは不確定と割り切って、卒後については言及しませんでした。具体性は欠いていたものの、技術側からマネジメント側へキャリアをシフトしたいという気持ちは強くありました。それはMBA履修中の意思決定(科目選択や課題の取捨選択)だけでなくその後の転職活動の意思決定にも大きく影響することになりました。
そのような動機の軸を不動のものにする為には、もう少し踏み込んで「ストレス・テスト」を行ってみる必要があります。「その目的達成の為には本当にMBAでなくてはいけないのか?」「他の目的達成手段は考えられないか?」を今一度考えてみることです。大きな投資を必要とするMBAではなく、もっと小さな投資で同じ目的を達することはできないか?例えば、MBAへの動機が「食品業界で営業一筋の人がメーカーのマーケティング職にキャリアチェンジしたい」という場合、MBAに行かずとも、転職を重ねることによってその目的に到達することはできないか?MBAへの動機が「収入を増やしたい」という人も、本当にMBAが生涯収入を増やすベストな方法なのか?MBA費用、機会損失、MBA取得後の期待所得を概算でいいので計算してみる必要があるでしょう。どこのMBAか、MBA修得時で自分は何歳か、MBAを適正に評価してくれる職場環境に身を置けるか等、様々な不確定要素でそのROI(投下資本利益率)が大きく変化することに気付くことでしょう。
多角的に他の代替手段も考え抜いた上、選択肢としてMBAが残ったのであれば、私は迷わずぜひ挑戦してほしいと思います。このように熟慮をした上、確固たる動機を持って取得するMBAは後の人生にとって貴重な経験、人脈、思考の幅が得られるまさに“プライスレス”な経験となることでしょう。
Posted by
Hiroshi Ikeda
at
3/06/2010
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