September 9, 2015

「シンプルに考える」森川亮さんがシンプルに語りかけてくれた事


元LINE CEOで、現在新たにC Channelという動画配信メディアを立ち上げた、森川亮さんが昨日来社され、お話を聞くことができました。

とっても刺激的で、ハッとさせられる内容のお話満載だったので、質疑応答が途切れることがありませんでした。著書「シンプルに考える」に書かれていないような、横道話や生煮え話も聞くことができました。



--------会場からのQと森川さんのA--------

[シンプルについて思うこと]
質問:著書「シンプルに考える」に書ききれなかった事とは?
「幸せとは何か?」について考えるところがある。幸せと感じる一歩手前の状況をいかに保つか。人は幸せと感じた瞬間に、甘んじる、守ろうとする。チーム、組織、自分がコンフォートゾーンに入る手前で突き放す勇気が必要。


質問:シンプルにしすぎて失敗したことはあるか?
「基本、社員に嫌われてるんですよね。」 ダイレクトに言い過ぎてしまう癖がある。


質問:どうしても複雑に色々考えてしまう人はどうすれば良いか?
人に好かれることを捨てる。人に好かれようと思ってすることは表面的。好かれなくてもいいと思い、本気で相手と向き合った先に、本当に好かれるような関係を築くことができる。


[人について思うこと]

質問:変化を受け入れる姿勢は、元から?それとも経験や訓練で身に付けたもの?
初めはそうでなく、変化に対してイラッとしたこともあった。が、変化に対してどうして自分がそう感じるのかよく考えた結果、変化を機会と捉えた方が、上手く回ることに気がついた。


質問:失敗を楽しむにはどうすればよいか?
失敗は楽しくない。楽しんでいるようでは、チーム、会社、ユーザーに失礼。意味のある失敗を積み重ねることが大切。その為には、仮説、論拠を事前に考え尽くす。


[ビジネスについて思うこと]

質問:「ビジネスにおいて、リスクやコンプライアンスに配慮することはスピードを遅くする」と言うが、それらを気にせずに失敗した経験は?
何も考えていないわけではない。Googleはヤバいことを結構やっている。Yahooは優等生だから危なすぎる橋は渡らない。LINEは両方を見て、その中間をとった。要はベンチマーク。


質問:大企業はダメっぽく聞こえてしまうが、そんな大企業へのアドバイスは?
大企業の一つのチャレンジは、計画者と実行者が別々だと上手くいかない。一緒であるべき。その為には、社内にいくつもベンチャー事業部をつくるイメージ。


[日本について思うこと]
質問:今の日本において森川さんが課題と思うことは何ですか?
メディアのあり方。まだまだタブロイド型。情報を一方通行的にばらまくのではなく、コミュニケーション型のメディアを作りたい。


質問:技術偏重など日本がガラパゴスを脱却し、成長するには?
大企業には率直に物を言う人が少ない。不要な配慮がある。日本人は人の気持ちを汲むとされるが、本当の意味で人の気持ちを分かっている日本人は少ない。色々な国、文化の人と働く上で、様々な価値観を受け入れ、気持ちを尊重することが必要。また、人(ユーザー)の気持ちを、真に製品・サービスに落とし込むこともヘタ。


質問:日本を元気にするにあたってのツボや課題は?
教育と医療。日本人はみんな先生になりたがらない。先生を魅力的と感じてもらう必要がある。産業としては農業とエネルギー業。日本の持ついいものをITで活性化できる余地がまだまだある。



会場からの質問にひとつひとつ、歯に衣着せず端的に面白く答えていく姿が印象的でした。本を読み進めていくと溢れ出すように質問が湧いてきたのですが、2つだけ伺いました。

私の質問:「ユーザーが本当に求めているもの」を生み出すことだけに集中する、というがどうやってユーザーの求めるものを突き止めるのか?
ユーザーに一番近い、現場の人間に企画立案など権限移譲する。ユーザーの声の裏にある本質を考え抜く。最近はC Channelの求心力である「カワイイ」とは何かについて考えている。


私の質問:なぜLINEを辞め、C Channelを始めようと思ったか?
LINEはある程度成長してしまったので、より成長スピード、ダイナミクスが感じられる仕事を求めて。また、若者に活躍の場を与え、メディアのあり方を変えて、日本を元気にするビジネスをまたいちから作りたかったから。--------

ことごとく世間の常識と逆をいく森川さんの考えや行動は、決して奇をてらって逆張りをしている訳ではなく、シンプルに本質を自分の頭で考え抜いた結果なんだなと、感じました。




シンプルに考える 森川亮
最近幸せと感じて甘んじているな、と思う人にオススメです!

May 25, 2015

ネット好きもそうでない人もみんな「インターネット的」


僕が初めてインターネットを使ったのは、大学の入学祝いに買ってもらったノートパソコンを電話回線に繋いだ時でした。

18年も前のことなのであまりよく覚えてないのですが、その当時のインターネットの使い道といえば、
PostPetの愛犬が友達のパソコンと行ったり来たりするのを楽しんでいる、くらいなものでした。


それとほぼ同じ時期、1998年に「ほぼ日刊イトイ新聞」は始まりました。
主宰の糸井重里さんは、それから一日も休まずにインターネットを介して情報発信を続けています。
「ほぼ日刊イトイ新聞」創刊から3年後の2001年に書かれた本書には、「インターネットの可能性とは?」「どのようにインターネットと向き合えば人は幸せ、豊かになれるか?」について、イトイ流の深い洞察に基づく、根源的な考えが綴られています。


インターネットの黎明期に書かれた本にもかかわらず、鋭く予言的に今のネット世界を描いていて驚きでした。


本のタイトルでもある「インターネット的」とは、インターネット自体がもたらす社会や人間関係の変化。それ全体のこと。
例えて言うなら、自動車それ自身ではなくモータリゼーション。自動車の普及とともに変化した世の中や生活、全てのこと。


彼は、世の中のインターネット的変化を3つのキーワードに纏めました:
①リンク  一見不要な情報からのつながりに可能性を見いだせる
②シェア  根源的に人って分け合うことを楽しく感じる(おすそ分けする人は皆に喜ばれるし、信頼もされる)
③フラット  身分、立場だけでなく個人の価値観も平坦、自由になる

あ、あるある。そうなってる。って頷きながら読み進めました。


でもよく考えると、それらってインターネットが登場する前からも日常的に行われてることだったりするんです。
パソコンや光ケーブルがなくたって「インターネット的」であり得る、と糸井さんは言います。

①リンク  池田がこの前の飲み会で、餃子についてつぶやいてたよな。次の日本餃子教会のプロジェクトは池田に任せてみよう、とか
②シェア  食べきれない程みかん貰ったから、お隣さんに分けてあげよう、とか
③フラット  水戸黄門が印籠を隠して諸国行脚していたりとか

昔から行われていたことだけど、インターネットの浸透、発展によって、この3つの変化が社会や世の中の至る所で、加速度的に進んでいくことでしょう。

どんどん誰もが、自由に、繋がって、共有されていく。
グローバル化とか少子高齢化と同じかんじで、インターネット的変化は必ず誰しもに影響を及ぼすことであり、転換期の真っ只中です。

あなたの会社の社食のメニューが突然英語になったり、年金受給開始が70歳に延びたりするのと同じように、
必要、不必要にかかわらず有象無象の情報がシェアされて来たり、つぶやきによってある企業イメージが大きく毀損されたり、娘の彼氏から結婚の挨拶がSNSで飛んできたりもするでしょう。


自動車のように、インターネットは便利な道具として、僕達の生活をこれからも革命的に変え続けていきます。
そんなインターネットも使うのは結局人。インターネット的変化を楽しいと思うか、
疎ましく思うかは、その人の心持ち次第なのかもしれません。
源氏物語に描かれている人の感情の機微って、今の僕達が抱く感情と同じはず。好きだという気持ちを伝える手段は手紙からLINEに変わったかもしれないけど、好きだという気持ちは普遍的でそれこそが人の原動力なのです。



今よりもちょっとだけ、一見どうでもいいようなことを大切にしながら、周囲に敬意を払っておすそ分けしていけたらいいなと思いました。


インターネット的 (PHP文庫)