December 26, 2010

合法の極楽浄土~全裸・混浴ドイツ・スパ初体験~!!

先週は年末恒例の職場の全社会議兼、ホリデイ・パーティーということで、ドイツは旧西ドイツの首都ボンに行ってきました。そのパーティーの席でのこと。現地でのあまりの寒さから、「温泉にでも入りたいねー。」などとドイツ人の同僚と話をしていたところ、有力情報をゲット!なんと、隣街のケルンに温泉があると言うではないですか!!単なる温かいお湯ではなく、天然の温泉が湧いているという話。温泉フリークとしては、行かずして、帰らざるべからず!ということで、長い旅と会議の疲れを癒すべくリラックス感覚で一路その温泉に向かいました。ところがそこでは、リラックスはおろか、数々の温泉を経験してきた私の想像をも遥かに凌駕する未知の世界が待っていたのでした!!

その施設の名はClaudius Therme(クラウディウス・テルメ)。ドイツはケルン中央駅からタクシーに乗ること約20分。広大なラインパーク公園の北の一角にその広大なスパ・サウナ施設はあります。ベルギッシュランド地方およびライン川中域の火山活動などその特異な地理的条件から、ここオーデコロン(ケルンの水の意)発祥の地でもあるケルンの街に豊かな源泉が湧き出ています。

とりわけ海外、特にヨーロッパでの温泉は初めてでした。右も左も分からないまま、楽しみ半分心配半分、とにかく入館です。受付の係の人に、「とにかく初めてなので、何も分からない。手ぶらで何も持って来ていない。」と伝えました。すると、館内での飲食の清算に使用するリストバンドを渡され、タオル、バスローブ、水着の3点セットをレンタル。水着ももれなくついてくるということは、「水着着用必須なんだな」と。ふむふむ、ここまでは慣れた手順といったところ。


受付のすぐ隣にあるプールの更衣室のような、ブースで着替えました。まずは1階のプール・ジャグジーエリアに行きました。老若男女、シングル・カップル、年齢性別を問わず様々な人が、ジャグジーにつかったり、流れるプールで戯れたり・泳いだりとそれぞれに豊かな泉を楽しんでいました。その1階エリアを一通り巡回した後、係員に話を聞くと、「2階にはサウナがあるよ」ということで、道中冷えた体を温めに、上の階に行ってみることに。

階段を上がるとそこには、大きなステンレス製の扉が、まるでその奥のエリアと外界を遮断するかのように大きく立ちはだかっていました。“何かが”ありそうな雰囲気を感じつつその重い扉を開きます。そこは仕切りで区切られた小空間になっていて、周りには小物がおける棚が備え付けてあり、壁には衣類などをかける為と思われるフックがいくつも張り付いていました。「第2の更衣室!?」と感じつつも、分からぬままとりあえずその小空間を抜けました。そこにはなんと、未だ人生で見たことのない、信じがたい光景が眼前に広がったのでした!


プールで戯れる全裸の男女。仲良く裸でジャグジーにつかるカップル。シャワーでクールダウンさせているサウナで発汗した裸体。

物語の世界でしか出会ったことのない、桃源郷の世界が、アダムとイブの世界が、現実の光景として私の眼前に広がっている、その事実。呆然と立ちすくむこと、(決して大げさでなく、感覚的に約)3分。ようやく意識が戻ってくるとともに、水着を着てそこに存在する自分に、逆に恥ずかしさすら感じ始めました。そこで、さっきの第2の更衣室に再び戻り、私も「郷に従う」ことに。水着を脱ぎ捨てるも、捨てきれない羞恥心がバスローブ一枚を纏わせたものの、再びいざ突入。

そこでは、人間を性により分け隔てることはなく、まるで、身にまとった外界の全てを取り除き、真にリラックスした姿で寛ぐ人々。ベンチに身体をあずけて寝そべる者。傍らの足湯で寛ぐ者。バブル・ジャグジーで暖をとる者。最初、あっけにとられてしまった自分を恥ずるくらい、そこには性的な雰囲気など微塵もありません。男女ではなく、人類に近いそんな感覚。次第に目も脳も慣れ、「遠路はるばる来たのだから寛がなくっちゃ」と気持ちも切り替わり、お目当てのサウナに入ってみることに。

扉の内側のこのエリアには、その周囲にいくつもの異なる個室サウナがあります。日本で最もポピュラーなタイプの、階段状の80-90℃のフィンランドサウナ。また、円形タイル張りの、湿度100%40-50℃のスチームサウナ。変わりどころでは、一見日焼けマシーンのような、ベッド型の機械に横たわり、遠赤外線を浴びるタイプのサウナ(55℃、湿度60%)。別料金ですが、45分の垢すりのような、ボディー・ラビング。どれから入ろうか、迷ってしまうくらいのバラエティー。

とりあえず、広めで既に数人入室している低温サウナに入ってみることに。各サウナの扉の側には必ずフックがかかっていて、皆そこにタオルやバスローブを引っかけて行きます。私も、恥ずかしさとドキドキ感をバスローブと共にフックにかけ置き、いざ入室です。

そこには、既に気持ちよさそうに身体を保湿させた男女が数人、それぞれの体勢で寛いでいます。階段に腰掛けひたすら俯く者。タオルを一面に広げて、寝そべる者。そんな皆に共通しているのは、ドイツ人の気性でしょうか?それとも、真剣にサウナと対峙しているのか?中央の塔から流れ出る流水のせせらぎ以外は、皆、言葉一つ交わさず、静かに沈黙を保ちつつ汗を絞り出しています。初体験の私は、その常連たちのように易々とサウナの境地に至れるわけもありません。というのも、煩悩捨てきれず異性の存在がいやがおうにも気になってしまいます。異性と言っても、そこに佇んでいたのは、異性と呼ぶにはクエスチョンマーク(?)な、見た目50代の老女。敷きタオルの上に、男性の視線など跳ね返すかのように全てを包み隠すことなく、仰向けに寝そべり、目を閉じています。

私の入室前の淡い期待は見事に打ち砕かれ、「そりゃ、そんなもんだよな。若い人なんているはずないよな。」と期待を物語の世界に仕舞い込んだその瞬間!入室してくる二人のシルエットがサウナの扉越しに!

他の人の監視の視線を避けるかのように、私は、とっさ反射的に入口から目線を反らしました。しかし、人間の目とは驚異的です。コンマ何秒のその瞬間でさえ、二人の姿は確実に私の網膜にその像を残しました。サウナに入室してきた二人は、見た目、自分よりもはるかに年下と思われる、初々しさあふれるカップルでした。入室するや否や、彼の方は、「考える人」のように俯き加減で物静かに座るかと思えば、その彼女は、タオルを大きく広げ、近くの木枕を手繰り寄せ、仰向けに体を横たえました。もちろん、その体を覆い隠す、羞恥の心もタオルも何もありません。目のやり場に困ると思いつつ気付けば、私を除く周囲の皆はひたむきにリラクゼーションを追及して汗をかくことに集中しています。その若いカップルも、言葉は一言も交わさず、それぞれ思い思いの体勢で、自らの新陳代謝促進に集中です。初めは視線が泳ぎ、どうして裸の男女が言葉も発することなくこのせまい箱に籠っているのか理解しようと考えを巡らせたのですが、答えなど浮かぶわけもありません。答えを待つより先に、次第に目が、脳が慣れてきたのか、だんだん目の前の光景を事実として受け入れられるようになってきました。恥ずかしさから誘発される汗から、純粋にサウナの熱により誘発される汗へと、次第に変わっていくのでした。

そんな、衝撃的サウナ体験でのぼせた頭を冷やすべく、そのサウナエリアに併設するように、レストランとバーカウンターが併設されています。さすがそのダイニングエリアでは全裸と言う人はさすがにいませんでしたが、デトックス後、バスローブを纏う者、下半身だけタオルを巻く紳士、など、各々思い思いのスタイルで、ドイツ料理とドイツビールを堪能していました。私も、地元のドイツビール12.5ユーロを注文。発汗後の開ききった毛穴に浸みこませるように、ビールを一気に流し込みました。「ぷは~。」

この広大な施設。館内だけでなく、館外にも10種類以上の趣の異なる、離れのロッジのようなサウナや、レストラン施設があり一日中いても全てのサウナを回り切れない程の充実度です。私もできるだけ見て回りたかったのですが、一歩外に出ると氷点下の空気で凍った地面に一分と足裏が持たず、離れまでたどり着くことすらできませんでした。。よく見ると皆サンダルを履いていました。サンダル、忘れずに持参するか、受付でレンタルしましょう。澄んだ空気の冬の夜、外庭からはライン川の対岸に、ライトアップされ黄色く輝くケルン大聖堂の2つの尖塔が、湯けむりの中、綺麗に夜空に浮かび上がっていました。


料金は週末で、2時間、4時間、1日、それぞれ、16.5022.5029.50ユーロと日本の高級ラインの日帰り温泉が約3000円であることを考えると、ほぼ同等レベル。(料金的にも施設の充実度的にも、1日ゆっくりした方がお得ですね♪)館内の食事はメインディッシュで約15ユーロといったところなので、やや高めな気もするのですが、きちんと調理され、フォークとナイフで頂く食事がサーブされるという点と、アルコール類の安さから補って余るコストパフォーマンスです。

温泉好きを自称していることもあって、数々の温泉、スパ施設をこれまで経験してきました。しかし、ここまで異文化体験を感じることができた温泉に出会ったことはありませんでした。拙文のあまり、その新鮮な驚きがどの程度お伝えできたか分かりませんが、「百聞は一見に如かず!」ドイツ(ケルン以外にも、ドイツにはバーデンバーデンという有名な温泉街もありますよ!)に足を運ぶ機会があったら、ぜひ温泉の超文化を自ら体験してみてはいかがでしょうか!

参考:
ドイツ観光案内ガイドブック

Those Crazy Germans!: A Lighthearted Guide to Germany
[ドイツスパ事情についての本(特に日本語書籍)はほとんど出版されていない中、
ドイツのスパ・サウナ文化からそこでの立ち居振る舞いについてまで
詳細に解説された稀有なガイドブック(洋書)。
2008年出版ですが、現代においても普遍的なドイツ文化を垣間見ることができ、
読み物としても面白く、ドイツ・スパ初挑戦の前にぜひ一読をお薦めします。]

Claudius Therme Facebook Photos
[館内もちろん写真撮影禁止でしたので、雰囲気はこちらから]

超異文化スパ体験。ドイツ式サウナパラダイス マナー講座
[日本でも情報がほとんどない中、日本人視点で、ドイツスパのマナーや、ケルン郊外のその他のスパも紹介して下さっています]

December 12, 2010

来年こそ、脱、情報の行き違い/迷子!~手帳選びのその前に~


皆さんは、「あなた!今週日曜日は子供の保護者会があるって、前に言ったじゃない!」と妻に責められたことはないでしょうか?
また、「年賀状の宛名を書くのに、xxxxさんからだいぶ前に引越しましたってハガキ来てたけど、あれどこにいったっけー?」と今まさにお悩みの方、多いのではないでしょうか?

私自身もこのような、「ミスコミュニケーション」や「情報の迷子」を今まで数多く経験してきました。これら問題は一見すると症状が異なるのですが、「情報がうまく管理できていない」という同じ原因を共通しています。そんな経験のお陰もあって(^_^;)、いくつか実践に移し、今でもカイゼンを行っている情報管理のやり方を、つながる為と行動する為に分けてご紹介したいと思います。


つながる為の情報 [コンタクト]

つながる為に必要な情報には主に、メールアドレス、電話番号、住所があります。これらの情報はそれほど更新頻度は高くないものの、人数が多いと量も膨らむ情報です。加えて、散在し、散らかりやすい情報でもあります。先の例のように、友人からの住所変更やメールアドレスのアップデート情報も放っておかれるのが大半でないでしょうか?


そこでお薦めなのが、ウェブ上のサービスを利用した連絡先の一元管理です。念を押したいのですが“一元管理”というのが肝です。いろんな所にではなく、一か所に管理するのです。私はGoogleの提供するGmailのコンタクトを使っています。友人から連絡先変更の旨を受けたら、いの一番に必ずこのコンタクトにつっこみます。注意しなくてはいけないのがその手のアップデート情報は携帯メールに来ることが多いのですが、携帯電話に入れるだけでなく、必ず一元管理の場所につっこんで下さい。例えば、その携帯に来たメールをGmailに転送しておいて、後からでもいいのできちんとウェブ上の決まった場所に情報をしまいこむのです。(携帯が対応していて、直接Gmailコンタクトなどウェブ上の連絡先に更新できる場合はそれが一番です。)見落しがちですが、署名を付けてメールを送ってくれた人の署名の情報や、CC付きのメールのCCにあるメールアドレスなども、合わせて突っ込んでおくと、後からメールの山をかき分ける手間が省けます。
ちなみにネタばれですが、知人から出産の連絡を受けたら、その子の名前、生年月日、性別を合わせて記入したり、いつお会いしたかなど、ちょっとした事を個人情報と合わせて記録することにしています。年に1回会う人に毎回、「お譲ちゃん、いくつになりました?」と聞くより「xx(子供の名前)ちゃん今年で3歳、もう幼稚園だね!」の方が、いかに相手の心に響くことか。

ウェブ上で管理すると、インターネット接続の環境さえあれば、どこにいてもその情報にアクセスし確認・更新できることがメリットです。しかし本当のメリットは情報の引越しの手間が省けることと紛失の心配がないという点です。私自身Gmailコンタクトに本格移行する前は、MSアウトルックで連絡先管理していた為、パソコン買い替えのたびにエクスポート、インポートを繰り返す必要がありました。また、データの紛失が怖かった為、定期的な携帯&アウトルックのバックアップにも時間をとられました。(余談ですが、アウトルック以前は、紙小さな手帳のような住所録帳なるものに手書きで書いておりました。時代が感じられますねー。)Yahoohotmailも同様のサービスがあるので自分の利用しているウェブメールが提供する連絡先管理を利用してみてはいかがでしょうか。

行動の為の情報 [スケジュール]

行動の為の情報、スケジュールについての情報管理です。ビジネスでもプライベートでも予定の急な変更などはよくあること。連絡先ほどは横の広がりを持つわけではないですが、逐次の更新が必要な情報です。スピーディーな情報へのアクセスがキーとなります。スケジュールの更新を怠ったり、後手になったりすると、ダブルブッキングや予定そのものをすっかり忘れるという問題が起こる為、予定が入ったら即座に記録することが重要です。また、予定は自分にだけ影響を及ぼすものとは限らず、他人の予定とも相互に影響することがあります。一緒に何かをする場合とか相手の都合を考慮して自分の予定を調整する必要があります。互いに独立なら事はシンプルですが、そうもいかない場合があります。

このような性質から、スケジュールは2通りの手段で分けて管理することをお薦めします。一つは、自分に関するスケジュールは手帳に記録。インターネット接続の環境がない場所でも手帳は常に持ち歩くことで、真に、場所と時間を選ばずにいつでも予定を漏らさず記録できます。(手帳ならバッテリー切れの心配もないですしね。)やはりここはアナログに頼る部分です。
もう一つは共有の必要のあるスケジュールをウェブ上で管理することです。例えば、冒頭の例にもあるような妻との口約束を見落したといった問題に対しては、即座にその予定を自分の手帳に書き込めばよいのですが、なかなか出来るものではありません。そこで、お互いに予定をオープンにし、公開し、更新し合う必要があります。この場合はウェブでの管理が非常に便利です。但し、一つ注意です。一人で実行しても意味がないので、参加者みんなの協力が不可欠です。「そんな、ウェブのカレンダーにいちいち記録するのは面倒だ!」といった抵抗勢力に対してその必要性を説く必要があります。くどくど、メリットを説明してもたいがい実感を持ってもらえない場合もあるので、その時はアカウントを作ってあげて、まずは始めてみようと半強制的に実行に移してしまいましょう。案ずるより産むがやすしですね。

私の場合、Googleカレンダーを使用しています。共有の必要がある人を自分のカレンダー「マイカレンダー」に追加し、相互に閲覧、更新できるようにします。例えば、年末年始の新幹線のチケットの事前購入など、一人では忘れてしまいそうな予定も二人以上なら誰かが気付いてカレンダーに入れておくことで、確実購入、家族全体が、車両間の立ちっぱなしを免れることが出来るといった具合です。スケジュールの漏れの可能性が低くなるというメリットの他にも、グループ(夫婦間など)で予定を決める必要がある時、お互いの予定をいちいちメールで調整してから、いついつと結論を出すにも時間がかかりがちですが、その工程数と反応時間が格段に改善するという利点もあります
また、点数を稼ぎたいお父さん方は、記念日なども合わせて記入しておくとよいでしょう、リマインダー付きで!(Googleカレンダーには、事前の希望するタイミングに予定の事前告知をする機能が付いています。携帯のメールアドレスを設定しておけば、予定の事前告知が携帯のメールあてに飛んできます。)


私が高校生だった頃はポケベルが全盛の時代で、当時の流行に疎かった私は、公衆電話のブラインドタッチを極めた友人の発する724106*などもろくに解読できずに、自分って情報難民だなーと、幼いながら感じたものでした。それから時代も進み、情報の伝達速度と伝達量が指数的に増えて行くこれからの世の中、できるだけ手間をかけずに、的確なコミュニケーションをとれるよう、使える情報技術はうまく利用したいものですね。(最先端にこだわらずとも、従来の方法が勝ればそれを使い続けるもよし!)


余談:
ちなみに、年賀状を作っていて思ったのですが、年々年賀状が減っている要因の一つの仮説として「住所録の準備・更新に手間がかかる」ということがあるのではないでしょうか?その手間を、年賀状の受け取り主が持つシステムとして、一部Mixiなどが、住所を書く必要がない年賀状といったサービス「ミクシィ年賀状」を提供しています。はたして普及の程はいかに??手間の軽減が必要と言っておいたのですが、ちょっとした手間をかけることで、より気持ちが伝わるという点も忘れてはいけません。
郵便年賀.jpの広告ではありますが、日経ビジネス2010.12.6号でワタミCEO渡辺美樹氏が自身の年賀状の実例を公開していました。彼はその年の夢にまつわるメッセージを手書きで心をこめて書いているそうです。そのような年賀状を貰った側の気持ちは察するまでもないですね。書いてある内容よりもむしろ、そのような多忙を極める人がわざわざ手書きで私の為に一筆くれたという、そのこと自身に心動かされることでしょう。有限な時間。効率的に行うべきところ、それによって生まれた余裕時間を費やし手間をかけるべきところ、見極めていきたいところです。


ちなみに、 *724106=何してる? でした。ちゃんちゃん。

December 5, 2010

お金の話もう一歩踏み込んで、今年の運用総括!

個人投資家の情報発信力が高まる中、普段は飲みの席の話に上ることも少ない投資の話がにわかに話題となることが多くなってきた。ところが、話の内容と言えばどのように資産を管理・運用するかのノウハウと心構え的な話(いわゆるきれいな教科書的話)がほとんどで、肝心の「で、投資のその結果どうなったの?」という問いになると、突然話を持ち出す敷居が高くなる。それにはいくつかの理由が考えられる。

1)個人のお金の核心に触れる話なので、プライバシーの領域である。

幾ら持っている、幾ら儲けたと言った話は、昔からけむたがられる。
そのような話は、聞く側にとっては決して気持ちのいいものではない。また、幾ら損したといった話は、そもそも当人も忘れ去りたい事実である為、闇に葬られる。
結果、そのような話が日の目を見ることはない。
  
2)パフォーマンスの測定はそう単純でない。

実際にきちんとパフォーマンスを測定しようと思うと、奥が深い。
無配当の商品を買いっぱなし、流入・流出無しで持ち続けるのであれば、そのパフォーマンス測定は単純であるが、多くの場合、配当があり、売り買いが起こり、外貨で運用される場合、パフォーマンスはそのタイミング・為替によっても異なる。
計算の仕方によって、リターンの%は大きく異なる。もちろんそれを逆手にとって恣意的にパフォーマンスをよく見せようという悪徳ファンドも存在する。注意が必要である。

3)そもそもパフォーマンスを気にしていない。

例えば、写真研究会の部員でも、写真を撮る事が好きなのではなく、撮影に興味はなくカメラの本体そのものが好きという人がいる。
投資の世界でも同様。結果ありきの投資ではなく、金融商品、投資ノウハウが大好き。でも、結果はあまり気にしないという人も多く存在する。
毎日の市場の上げ下げに一喜一憂するのもどうかと思うが、結果を全く気にかけないというのも損とはなっても得とはならない。

以上の理由から、まだまだ投資の結果についての情報公開は発展途上である。
しかしながら、社会にとって性教育が不可欠なように、きちんと損得を伝える投資結果を含んだお金の話(投資教育)も“施し方”によっては悪ではなく、れっきとした善である。

(予断ではあるが、アメリカ、ヴァージニア州に金融危機の二の舞を避けるため早期の経済教育が必要とのことから、JAファイナンス・パークと呼ばれる子供のための経済を学ぶテーマパークが今年10月にオープンした。金融教育のキッザニアといったところだろうか。アメリカではこのような子供向けの施設が15カ所程作られている。日本においても今年7月に同法益公人ジュニア・アチーブメント日本として登録。施設とまではいかないが、無料の出張授業や様々な教育用プログラムを提供しているようである。今後の活躍と広がりに期待したい!




明確であるが、私にとって投資はあくまで手段であって目的ではない。(本当に夢のままかもしれないが)いつかお金からの自由を夢見て、地道に資産運用をしていこうという心づもりである。

お金の話をもっと活発にというのなら、“施し方”を考えた上で、結果についても共有する意味はおおいにあると考える。ということで、私自身個人的に四半期ごとに棚卸をしているが、一年の締めである121日時点のポートフォリオの配分と主要リスク資産の年換算リターンをまとめてみたのが以下である。


去年の12/1からの一年を総括すると、今年後半は、とりわけ円高が重しとなった一年だった。市場は全体に回復基調ではあるが、極度の円高によりその効果は限定的だった。来年は為替がどう動くのか、それによって、円建て資産と外貨建て資産の配分を考える必要があるだろう。

ちなみに記録として昨年121日時点でのポートフォリオ。

 【追伸】
後追いになってしまったが、投信ブロガーなどとはおこがましいが、投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year 2010に恐れ多くも票を投じさせていただきました。今から結果が楽しみです!

November 14, 2010

幸せ大安売り!資産形成は何の為?

最近重めの内容が続いたので、気楽な感じで。
愛読させていただいているマネックス・ユニバーシティーの内藤忍さんのブログのエントリー「これから考えるべきは、お金の殖やし方よりお金の使い方」
が面白かったので私も一考。

ある幸せを感じるその度合いを“1幸せ”と定義する。

例えば、1回の晩御飯をお腹いっぱい食べる幸せを1幸せとする。
バブルの頃は、見栄を張り高級レストランで晩御飯をお腹いっぱい食べて1万円だった。
1幸せ=1万円。

今は、牛丼大盛り卵付きで500円もあればお腹いっぱいになる。
1幸せ=500円。

極端な例だが、今やたった1/20のお金で同じもの(感情)が手に入ることになる。
今の時代、そんなに昔ほどお金をかけなくともそこそこ幸せになれるということである。

当時の高級シャンパンで味わった満足感と同じ程度の満足感を
比べ物にならない程安い第3のビールで味わえてしまえるわけである。


そう考えると、そんなに沢山のお金は本当に必要なものだろうか?と思ったりもする。
お金はそこそこあればよいのではないか、という思いが頭をよぎる。じゃ、お金よりも必要なものは何だろう?


時間??

お金に対する欲(お金の自分にとっての価値)が減っていくと
相対的に、時間に対する欲(時間の自分にとっての価値)が増えることになる。
つまり、お金増やしに一生懸命になればなるほど、時間の貴重さが際立ってくる。

仕事に没頭のあまり、趣味も持てず、ふと何のために働いてるんだろう!?とつい自問自答してしまう人なんかその格好の例かもしれない。

そうなると解決の術として、お金で時間を買うアイデアが浮かんでくる。
通勤時間を買おう。都心の高級マンション購入。ベビーシッターを雇おう。

それはそれで、身を粉にして一所懸命増やしたお金を
単に時間と交換しているだけの自分にふと気付く。
じゃ、何のためにお金を増やしていたんだろう?と。
そもそも、何がしたかったんだ?と。。。疑問は振出しに戻る。



デフレが止まらず、安く幸せが買える時代。
年金の不安、経済の不安などから、盲目的に資産管理、資産投資に傾倒しがちだが、
本当に重要なのは、何のためのお金なのか?考えること。
お金は手段であって目的ではない。
目的は何なのか?をぼんやりとでも夢見つつ、
それに1歩でも近づくようにお金にも働いてもらう。

そんな、スタンスでお金と付き合っていきたい。
と第3のビールで一抹の幸せを感じながら、内藤さんのブログを読んで思いを巡らせた。

November 7, 2010

【賃貸vs分譲 永遠のテーマに終止符を】 最終章!結論。(5分でできる診断ツール付)


前々回はモデルケースを用いて主に数字の面から分譲と賃貸を比較した。前回はそれに加えて、同様に重要である数字に換算しにくい定性的な側面も盛り込み、漏れのないよう両者のメリットとデメリットを洗い出した。今回はそれらを踏まえた上、どうやって意思決定を下せばよいのかを提案したい。客観性と公平性を確保する為に、私自信と私の知人の2つのケースを用いて説明する。

繰り返しになるが、賃貸がよいか分譲がよいかという問いに、誰にでも普遍的にあてはまる唯一解は存在しない。確証の無い前提に基づき、それらの損得勘定を精査しても優位差は見いだせない。また、前回列挙した項目のどれに重きを置くのかは人により異なり、その優先順位によって買うべきか借りるべきかは変わり得る。(当たり前すぎてつまらないことかもしれないが、、)つまりどちらに関わらず、意思決定をするにあたり良く考え“よく納得する”ことが、決断に自信を与え、その後のパフォーマンスを上方修正してくれる。“よく納得する”為の一助になればと、『優位性診断ツール』を作ってみた。


優位性診断ツールについて
(実際のツールは文章下部のリンクボタンもしくは左のUseful Toolをクリック)

図1:分譲vs賃貸優位性診断ツール(出力イメージ)


図1上部の座標は、分譲と賃貸との相対的な優劣を表す横軸、各検討項目間の相対的重要度を示す縦軸からなる。以下に示す検討事項9項目について重要度並びに分譲と賃貸のパフォーマンス(分譲と賃貸の2つの選択肢x9項目=計18点)を評価し座標上にプロットしていくわけである。

横軸は分譲vs賃貸の相対的なパフォーマンスを表す為、横軸の真ん中に点が位置する場合は分譲、賃貸の優劣に差はなく、全く同じ評価ということになる。逆に横座標で分譲と賃貸が極端に離れている場合は、そのパフォーマンスに明らかな優劣があるということである。
縦軸は各検討事項の相対的重要性を表す。縦座標で上にあればある程、その検討事項は評価者にとって重要ということになる。逆に下であればその分、重要度は低いということになる。(縦軸の真ん中の場合は、その項目の重要度は、全項目の重要度の平均値と一致する、つまり平均程度に重要ということである。)

以上から、右上の象限に点がくれば自分にとって、その評価項目は重要かつ優れているということになる(主たる動機となる点)。また、左下の象限に点がくれば、劣っているけれども、自分にとっての重要度は低いことになる(別に無視してもよい点)。重要な示唆を与えてくれるのは左上の象限である。左上に点がきた場合、それは重要であるけれども劣っていることを意味している(妥協をしなくてはならない点)。それぞれの点の位置を見ることで、選択決定の際にどの点を自分は“かっていて”どの点において自分は“妥協をすることになる”のか一目瞭然となる。

2次元で表された検討項目は示唆に富んだ情報を与えてくれるが、より端的に分譲、賃貸のどちらが優れているのか数値化したのが下部の優位性評価インデックスである。それぞれの点の位置情報からどちらの方が評価者にとって優れているのかを1次元的に数値化したものである。数値がより高い方がその人にとって良い選択というになる。(具体的には、インデックスは相対的パフォーマンスをそれぞれの相対的重要度で加重し、平均値をとった数値である。)


この初回版のモデルに組み込んだ検討事項は以下の9項目である。(経済的損得をあえて含めなかったのは、先にも述べたように想定次第でその優劣は容易に入れ替わってしまうからである)

[経済的事項]
1.資産の流動性
2.インフレ耐性
3.災害時のリスク耐性

[利便性事項]
4.引越しの容易さ
5.物件のグレード

[精神面事項]
6.支払の精神的負担
7.所有欲の満足度
8.老後の安心感
9.社会的信用の獲得


これらの各項目についてその重要度、ならびに分譲と賃貸に関するパフォーマンスを1-7で評価していく。


図2:分譲vs賃貸優位性診断ツール(入力インターフェイス)


重要度については:1=全く重要でない、4=中立、7=非常に重要 として前9項目について評価をする。
パフォーマンスについては分譲と賃貸、各々についてそれぞれの検討項目を1-7の値で評価していく。

各評価項目の定義は以下の通りである。
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1.資産の流動性:
投資や財務に疎い方は流動性の概念が理解しにくいと思うが、購入する不動産もすべて含めた自己資産がどれだけ容易に換金できるかということ。分譲購入を選択した場合と賃貸で行くと決めた場合で、自己総資産がどの程度固定されてしまう(好きな時に現金化できなくなる)のかということ。現金化しにくくなるのであれば流動性は低くなる。逆に、容易に現金化できるのであれば流動性は高いということになる。

2.インフレ耐性:
分譲を買った場合と賃貸で行く場合において、将来インフレ(賃料の上昇など)が起こった時、家計に占める住宅費がインフレに対して強いかどうかということ。

3.災害時のリスク耐性:
万が一の災害(地震や火事など)が起こった場合、住宅がそのようなリスクに強いかどうかということ。

4.引越しの容易さ:
(分譲の場合は、買ってしまったからなどといった)条件に縛られずに好きな時に自由に引越しが出来るかどうかということ。

5.物件のグレード:
住居の内装、設備やインテリアのグレードがよいかどうかということ。

6.支払の精神的負担:
分譲の場合は主にローン、賃貸の場合は主に賃料の支払いを精神的に負担と感じるかどうかということ。(ローンの場合は、借りているお金を返さなくてはならないということが精神的にプレッシャーになるかも考慮する)

7.所有欲の満足度:
家を所有したいという欲求をどの程度満たしてくれるのかということ。

8.老後の安心感:
賃貸ならびに分譲の場合、老後に対してどの位安心できるかということ。

9.社会的信用の獲得:
持ち家を持つもしくは賃貸で行くことで(例えば、与信審査や世間の目などといった観点から)社会的信用が得られるかということ。
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私の場合

まずは私自身、自分と向き合い評価をしてみる。
『強調しておくが、ここからが私見の部分(あくまで、私の場合)である。』

1.資産の流動性
重要度「6.5」/ 分譲のパフォーマンス「1.5」/ 賃貸のパフォーマンス「6.5

私にとって最も重要なポイントである。分譲は明らかに流動性の面で賃貸に劣る。市場の環境に応じてポジションを変えたいので資産の大部分が不動産という形で固定されてしまうことは、ポートフォリオの柔軟性の観点からも大きなデメリット。さらに流動性が低いということは、随時、資産価値を把握できないということで、目標リターンを持って積立投資をしているものにとって、パフォーマンスのモニタリングが出来なくなり、これも困る。やはり家計の経済活動における資産の流動性というものも、人間にとっての血液同様、さらさら健康でなくてはいけない。

2.インフレ耐性
重要度「4.7」/ 分譲のパフォーマンス「5.5」/ 賃貸のパフォーマンス「3

前回も言及したが、分譲にはある程度のインフレヘッジ効果があることは認める。個人的に、いつかはインフレは起こるのではと思っている。いつか分からないけれども実際に起これば、インフレが資産に及ぼす影響は無視できそうにないので、ヘッジは重要と考える。ただし、何も単一の現物資産である住処としての不動産にその効果は期待しない。いつ来るかわからないリスクヘッジの為に、とるリスクにしては大きすぎる。株式への投資やREIT、多少のコモディティーへの投資等、もっと流動性の高いインフレヘッジの代替商品は沢山ある。それでも対処できないような過度なインフレが起こったら、まず素直に家賃が安いところに引っ越すことを考える。言わずもがな、そんな状況が起これば、ピンチになるのは私だけでなく、日本や世界経済全体が狼狽してしまうはず。

3.災害時のリスク耐性
重要度「4.2」/ 分譲のパフォーマンス「2」/ 賃貸のパフォーマンス「6

万が一の場合、賃貸はいつでも出て行けるのでリスク耐性は高い。しかし、忘れてはならないのが、万が一の災害が本当に「万が一」の事であれば、心配しすぎることがかえってコストになるということ。もちろん万事の事態に備えるに越したことはないが、十分な余剰資金の確保が何よりの不安緩和剤となる。ゆえに、わずかに重要といった程度。

4.引越しの容易さ
重要度「6」/ 分譲のパフォーマンス「3」/ 賃貸のパフォーマンス「6

賃貸の方が明らかに引越しは簡単である。簡単に引越しが出来るかどうかということは、単に将来の自分のキャリア上、職場がどこになるか定かでないということだけでなく、ライフステージによって一緒に住む家族構成が変わる等といった点からも重要と考える。それらの状況変化に対して臨機応変に部屋の立地や大きさを引越しにより自在に変えられることは、引越しにかかるコストを埋め合わせて余るくらい大きなメリットとなる。また、近隣とのトラブル等生じた場合、賃貸なら簡単に出て行くことが出来る点も有利。

5.物件のグレード:
重要度「3」/ 分譲のパフォーマンス「6」/ 賃貸のパフォーマンス「4

一般的通念では分譲用マンションの方が賃貸物件に比べグレードが良い。もちろん昨今、賃貸物件でも分譲同様に上質に作りこんだ物件も増えてきてはいる。分譲の物件が賃貸として出されるケースも多い。私自身、豪華なロビーとか生ごみディスポーザーとか不要な付加価値に別段興味はない。最低限のセキュリティーや宅配ボックスなどがあれば十分なので、この項目の重要度は低めである。

6.支払の精神的負担:
重要度「5.5」/ 分譲のパフォーマンス「1」/ 賃貸のパフォーマンス「5.5

住宅費の支払いがメンタル面に及ぼす影響は無視したくない。ローンの支払いが常に頭の片隅から離れず、それがリストラ・失業の不安を増幅させるなどといった日々の精神的重荷だけでなく、住宅ローンのような長きにわたる借金はやはり、長期的にもキャリアやライフプランに良かれ悪かれ大きく影響を及ぼす。ローンの存在が夢や可能性の芽を摘んでしまう恐れも十分にある。一方、人によっては、ローンの強制的支払いが浪費癖を抑制し利点となる場合もあるかもしれない。しかしながら、節約したお金での積立投資を主体としたい私にとって、ローンはデメリットとなるだけでメリットにはならない。多くの投資本が示唆するように、金を借りているうちは投資はするな、という助言に忠実でありたい。

7.所有欲の満足度:
重要度「1.5」/ 分譲のパフォーマンス「7」/ 賃貸のパフォーマンス「1

物欲のあまりない私にとってこの点は、全くと言っていい程重要でない。分譲肯定派にとって最もポピュラーな理由付けはこの点ではないかと思う。所有の欲求というのは人によって千差万別。所有欲の強い人にとって、自分のものということへのこだわりはまさにプライスレス。借家に住むのと、ローンを組んでいながらも(他から借りたお金であるのだが、、、)買った持ち家にすむのとでは、そのような人にとっては住み心地が全く異なるようである。少なくとも私には当てはまらない。借家を恥じることも無ければ、ローンを組んで買ったからといってそのこと自体を誇ることもない。所有に対するこだわりは全くと言っていい程重要ではない。日本に古くからはびこる持家信仰は、バブル以前の不動産価格が右肩上がりだった時代の産物であり、いまどきでないと思う。

8.老後の安心感:
重要度「5」/ 分譲のパフォーマンス「5.5」/ 賃貸のパフォーマンス「2.5

老後に対する不安は歳とともに増えていく。少なからず、自分が学生の頃はそんなことは微塵も気にはしなかったが、現時点ではやや気にかけるといった程度。もちろん分譲の方がローン完済後、住処に頭を悩ませる必要がないという理由から老後の安心感は高い。が、裏を返せばその物件に住み続けなくてはいけない(もちろん売れれば他に移れるが、、)という足かせにもなり得る。一方、賃貸は高齢になると審査が通らないことや将来の賃料の上昇等、不安要素は多いのは事実。

9.社会的信用の獲得
重要度「1」/ 分譲のパフォーマンス「6」/ 賃貸のパフォーマンス「4

最も重要でない要素。持家だとクレジットカードの審査上有利に働くなど実生活の一部で、持家であることが評価される場面があるにはある。統計的に持家派の人の返済能力は高い。故に、より信用が出来るという理屈も分かるが、それが当てはまらないケースも沢山ある。しっかり毎月の支出を管理して賃貸で住んでいる人も信用性は十分高いと思う。逆に、分譲派でも住宅ローンに金利上昇が伴って、未払いに陥るということも起こり得る。とにかく、分譲=信用が高いというロジックはつっこみどころが満載である為、まったく重要でない。

以上の私の個人的な評価に基づいた結果は以下の通りである。

図3:私の結果


インデックスに注目すると2倍近くの差で賃貸の方が優位という結果となった。マトリックスについては、赤い点が賃貸を表し、青の点が分譲を表す。先に説明したように、資産の流動性が高い、引越しが容易、支払の精神的負担が軽いことなどが、私には賃貸が向いている理由である。一言で言うと、フットワークは軽くありたい、ということが一目で見てとれる。左上の象限に注目すると赤い点が二つ。老後の安心感とインフレ耐性については賃貸の足を引っ張る要素となっている。賃貸でいくのなら妥協をしなくてはならない点である。その他、社会的信用、所有欲、物件のグレード等は私にとって重要でないので、総合評価にあまり影響を及ぼさない。現時点において、賃貸の方が向いているというのが私の結果である。


知人の場合

公平を期す、というか、モデルの中立性を確かめる為に、私とは別の考えを持った知人にこの診断ツールで評価を行ってもらった。彼も私同様、買うか借りるかについて検討中である。

彼の診断結果は以下の通りであった。

図4:知人の結果


彼の場合、私と逆の結果で倍近くの差で分譲が優位であるという結果となった。主な理由は所有欲を満たしてくれる、老後が安心、社会的に信用も得られるからである。資産の流動性についてはその重要性は認識しているものの、分譲購入により流動性が低くなってしまうのはいたしかたないといった感じ。私との大きな違いは、引越しをあまり考えていないという点である。仕事が私と比べて安定しているせいもあるのか、落ち着いて定住したいという気持ちがある為、引越しが簡単にできるかどうかは彼にとって重要ではない。この診断結果から、彼にとっては賃貸よりも分譲の方がよいということが言える。

以上の例のように、検討項目の重要度、優先順位が変われば、分譲と賃貸どちらがその人にとって有利となるかは変わる。当たり前のことであるが、このツールでも同様に確認できた。


ツールの使用に際して

実際に、今マンションを購入しようか、賃貸のままで行こうか思案中の方にも是非、判断材料としてツールを活用してもらいたい。また、例えば妻と旦那とで意見が食い違う場合にもこのツールで考えを見える化させることで、どの点が共感できて、どの点が議論が必要かが一目瞭然となる。

[Adobe Flash Playerのインストールが必要です]
[開いてから操作可能になるのに少し時間がかかります]
[座標の点の上にマウスを載せると、その点が表す評価項目名が表示されます]
[β版ということで、エラー、改善点などありましたらご一報下さい]


使用方法は直感的で簡単であるが、分析結果の精度を高める為、幾つか注意点がある。

------注意事項------------------------------------------------
・ それぞれの検討事項がどんな定義で何を意味しているのかを真に理解することが第一。特に予備知識の無い方には、自己資産全体の流動性の概念やインフレがどうして関係するのか等、丁寧に説明したつもりではあるが、きちんと理解の上で評価する必要がある

・ 自分にとっての評価である。世間一般の印象や、近くの友人の影響等よりも自分で考え、自分にとってどの程度重要か、そしてその優劣を自分と向き合いなるべく客観的に評価すること

・ 1-7(0.1刻みで)の評価であるが、出来るだけスケールをフルに使うこと。答えが真ん中に集まりすぎると各々違いが分かりにくくなり、インデックスの差も小さくなる
---------------------------------------------------------------


最後に、

終わりのない議論「分譲vs賃貸」に終止符を打つという大きな目標を掲げて、3週に渡って分譲と賃貸について考えてきた。経済的要素、定性的要素を丁寧に考えて行くと、(普通すぎてつまらないかもしれないが、)やはり分譲がいいのか賃貸がいいのかは人それぞれであるという結論に至る。では、今現に悩んでいる私に助言を!という声が聞こえてきそうなので、手助けツールを作ってみた。きちんと使用方法を理解して使えば、ある程度は的を得た結果が出るものと思う。途中にも述べたことだが、どっちの方が絶対的に得だという意見はあまりに乱暴で、明らかに間違いであり、どっちが良いかなど人それぞれである。重要なことはそれを多角的にきちんと検討したうえで、方向性を決め、今後の人生で貫いていくことである。どうして自分にとって分譲の方が良いのか、どうして自分にとって賃貸の方が良いのか、自覚しながら人生を歩みたい。そうすることで、どちらの選択をとったにせよ、軸のぶれなくなり、その分だけパフォーマンスは向上するはずである。

こうした思考の末、私自身今思うのは、現役時代は賃貸で過ごし、生活余剰資金で投資を続ける。仕事から引退する頃にでも、育っているであろう資産を元に、現金で住処を買えればよいなとうっすら思っている。東京、日本とは限らない、どこかスローで温かいところにでも居を構えるのが良いのかもしれない。

October 30, 2010

【賃貸vs分譲 永遠のテーマに終止符を】 包括的メリット&デメリット

先週は、主に数字の面から分譲と賃貸どちらが得かを考察した。今回のケースの場合60歳の時点では、どちらの方が得であると結論付けるに足る有意差を見出すことはできなかった。想定が変わることで、その優劣は簡単に入れ替わる。前もってその損得勘定を精査すること自体あまり意味はないということが言える。決断にあたりより重要な事は、金勘定以外の要素も含め“よく納得する”ことである。よく納得することで、自分がどうして分譲派なのか(もしくは、賃貸派なのか)が明確になり、その後の住居に対する考えに一貫性が出てくる。そうすることでどちらを選んだとしても、最終的にはお得だったという結果が後から必ずついてくるはずである。

それでは、“よく納得する”為に欠くことのできない様々な検討項目について、経済面、利便性、精神面に分けて、それぞれの一長一短を見ていこう。

[経済面]

資産の流動性

  • 分譲は売りたい時に売れるとも限らない為、万が一の支出に対応し難い。(別途十分な生活余剰金の確保が必要)
  • 資産ポートフォリオが不動産に偏り、市況に柔軟に対応できない。不動産が資産のポートフォリオに占める割合が高くなる上、流動性が低い為市況に応じて容易にリバランス(資産の再分配)ができない。
  • 流動性が低いことは言い換えれば、資産価値がリアルタイムに把握できない。他の投資資産と異なり現物資産である不動産の資産価値を正確につかむことは難しく、自分の資産がどのくらいか把握しにくい。
  • 賃貸の場合、資産は不動産に縛られないので、これらのデメリットはない。

結果としての不動産の有無

  • 分譲の場合、ローン完済後には不動産という資産が残る。ただし、残るとしてもそれなりの年数を経た古い物件の為、その資産価値は疑問である。築年数を経た分譲マンションの資産価値については誤解が多い為、いくつかのデータを見てみよう。

東日本レインズの2010年3月の築年帯別中古マンション成約状況を見てみると、築0-5年の中古マンション成約平均価格は4040万円。築31年以上の平均価格は1271万円。ざっくり30年近く経ると価格は約7割減の3割になってしまう。[1]

また、別の切り口から見てみよう。不動産査定マニュアルの作成を行う不動産流通近代化センターの不動産価格査定方法によれば、築年数15年までは-1.5%/年、16-20年では1年古くなるごとに-2%、築年数21年以上では-2.5%/年で、築年数に応じて以上の割合で査定価格を下げていく。築30年の物件であればそれだけで、累積-57.5%となる。つまりプロが査定すると30年経っているというだけで、物件は購入時の約4割の資産価値になってしまう。[2]

あての無い希望的試算に基づくことなく現実をきちんと見据えた上で、買うか借りるかの決断をすべきである。

  • その他、ローン完済後にその物件に住み続ける場合には賃料が発生せず、住居費が格段に抑えられる。分譲の大きなメリットである。
  • しかしながら、一戸建ては土地があるからまだましだが、分譲マンションは基本、土地がないので不動産としての価値は限定的。(東日本レインズのデータからも、土地付き一戸建ての方が分譲マンションに比べて遥かに値崩れ率が小さいことが示されている。30年後の一戸建ての平均成約価格は購入時の約6割である。[1]
初期資金の使い道

  • 分譲の場合は、初期資金の頭金は不動産という形に変わり保有されることになる。不動産が値上がりしない限り、その頭金は時間とともにその価値を減らしていくことになる。
  • 賃貸の場合は、分譲購入の頭金に使わなかった分を投資に回せる。重要なポイントなので、ケースに基づいて詳説する。
では、頭金を払い分譲を購入した場合と、賃貸に決め分譲を買わなかった浮き分を投資に回した場合とどちらが得か、先の例同様に30-60歳の場合について考える。

分譲の場合、最初の持ち金800万円を全て不動産購入に充ててしまう為、そのほかの投資はできない。30年後の60歳時点で残る資産は唯一不動産だけである。上記のケースの場合その資産価値は購入価の37.5%の1312万円である。
一方賃貸の場合、最初の持ち金800万から引越し費用90万円を除いた710万円を投資に回すことが出来る。710万円を30年間複利運用した場合の資産総額は以下のようになる。

710万円を約2.1%で運用できれば30年後の資産はほぼ分譲の30年後の資産価値と一致する。つまり2.1%以上で運用できれば、60歳時点においては賃貸の方が得ということが言える。損得の結果は、もちろん賃貸派の運用成績と分譲派の物件の資産価値との力関係で揺れ動くことになる。

(ここでは、簡略化の為、途中のキャッシュフローは省略し最初の資金のみに注目した。分譲の方が賃貸に比べてランニングコストが低いといった場合、分譲派もその差額を運用できるといった議論もあるが、分譲派の場合、たいてい余剰金は投資に回すよりもローンの繰り上げ返済に充てることになる。(ローンと投資の両天秤はリスクを高めることになる)とどのつまり、ローンの期間を縮めることはできても、分譲派はローン完済までの間は不動産資産オンリーという状況から抜け出せないのである。)

インフレ耐性

  • 分譲物件を固定金利ローンを組んで購入した場合、インフレによる住宅費上昇リスクを回避できる。今回のケースではインフレ率が0.5%/年から1%/年に倍になった場合、賃貸は30年後の総支払額が約500万円増えることになる。
  • 賃貸の場合、インフレによる賃料の上昇で住宅費負担が増えるが、頭金の残り分の資産をきちんと株式や現物資産に分散運用させることによりインフレをヘッジすることは可能である。運用成績次第であるが、30年後の500万円は十分にヘッジできる余地はある。

災害時のリスク耐性

  • 分譲の場合万が一の自然災害などにより住居が破損した場合、家主負担となるリスクがある。
  • さらに集合住宅の場合、災害や老朽化により建て替えが必要となった場合、居住者全員の同意がないと行えない等、修繕したくてもできないといった不自由な点も。
  • 一方賃貸の場合、修繕・改装は基本大家負担が負担するので、自己負担はゼロ。万が一の場合は退出すればよい。



[利便性]

引越しの容易さ

  • 生活スタイルの変化に応じて立地や間取り等適宜変られるので、無駄がない。
  • 万が一の近隣とのトラブルや思いがけない転勤、失業時に簡単に引っ越せる。

物件のグレード

  • 一般的に分譲物件の方が設備・内装などグレードが高く造りが良い。
  • が、最近賃貸物件も良くなってきている。(分譲物件が賃貸に出ることも多い)

家のカスタマイズ性

  • 分譲の場合、好みに合わせて室内を改造できる(一定の改装・修繕費はかかる)
  • しかし、分譲の場合は部屋の中身は変えられても、立地や近隣環境までは変えられない。
  • 賃貸は環境そのものが気に入らなければ、容易に引っ越しができる。また、新しい物件に引っ越すことで定期的に新しい住環境が手にできる。



[精神面]

支払の精神的負担

  • ローン支払いには精神的負担がある。
  • ローン支払いにより、夢や可能性の芽が摘まれる恐れがある。例えば、ローンがある為に独立開業に二の足を踏むとか、ローン完済するまでは早期退職できないなど。
  • 逆に人によっては、ローンがモチベーションとなる場合もある。浪費家の人にとってはローンにより、節約志向が生まれる。ローン返済の為に残業を厭わないなど。

所有欲の満足度

  • 所有欲の強い人の場合、分譲なら一国一城の主の気分を満喫できる。実はこの点が分譲派肯定論の本丸であると思う。持ち家志向の強い人であれば、「自分のもの」というような満足感は持ち家でないと満たせない。ただし、言わずもがな持ち家の満足感とローンによる精神的不安とは表裏一体。
  • 賃貸派は一生借主身分。

老後の安心感

  • 分譲の場合、ローンが完済すれば、それ以降住居の為の支出が格段に安くなる。
  • ただし、築年数が増すにつれ修繕・維持費は結構かかる。
  • よく考えなくてはいけないことが、30年も先の事である老後の終の住処を老朽化した築30年の住居に今のうちから確定させたいかどうかということ。(実際のところ30年間同じ分譲マンションに住み続ける世帯の割合はそう多くはない。)
  • 一方賃貸は、当てのない年金を頼りに、老後も賃料を払い続けなくてはならないという負担と不安。
  • 高齢者だと賃貸契約が結べない場合があることも不安要素。

社会的信用の獲得

  • 分譲派にとって住宅ローン審査を通ったという事実が自信を与える。
  • 持ち家をもって初めて一人前と見なす風潮も昔はあったが、今は古い考え方かもしれない。流れは所有から利用へ、アセットからフローへ。
  • ローンを組む時に、保証人が不動産を所有していると審査が甘くなるといったケースや自分名義の持ち家だとクレジットカードの審査が通りやすいといったケースはあるにはあるが。



[その他]
  • 今なら、住宅ローン減税など、分譲には各種優遇措置がある。(例にもあるように総支払額の3-5%程度の節約効果)
  • 分譲の場合、万が一ローン名義人が死亡した場合、団体信用生命保険が残債を支払ってくれるが、団信加入義務のあるローンの場合、保険料はそもそもローンの金利に上乗せされているという事実は忘れてはならない。その為、ローンを組み団信に加入した場合、保障の重複を避ける為、保険を見直しが必要である。


以上のように、自分にとって分譲と賃貸のどちらがより適しているかは、経済面のみならず利便性や精神的な側面などから包括的に考える必要がある。よくある過ちとして、多面的に判断するのではなく、思いつきにより特定の検討項目ばかりに着目し意思決定をすることが多々見られる。(そもそもそのような人は両者の一長一短を比較することなど最初から念頭になく、すでに答えが決まっている)。その結果、見過ごされたデメリットが後に現実となり後悔を生む結果となることがある。このような悲しい結末を避ける為にも、これらの項目をもれなくかつ、偏りすぎないように巧みなバランスで検討した上で、買うか借りるかを決めるべきである。これは決して他人との比較といった問題ではなく、自分の家庭環境・ライフプランと真摯に向き合い検討することが肝である。

最後に忘れてはならないこととして、ある特定の条件下では分譲が明らかに経済的に有利となる場合がある。比較目的からケースを単純化した為、今回のケースでは考慮されていないが、以下のような場合は分譲の方が得といえるであろう。(それは裏返せば、以下の条件のいずれかに当てはまらなければ、賃貸が勝ることもあるということである。)

[経済面で分譲が勝る条件]

1.ローン完済後もその購入物件に住み続ける場合


ローン完済後は分譲の方が賃貸に比べはるかに月の住居費が安く済む為、住めば済むほどその住居費には差が付く。ただし、築30年超えの物件に住み続けたいかはまた別の話。。

2.ローンを組まず現金で物件を購入できる場合

現金払いできると多くの利点がある。まず利息がなくなる分、総支払額をかなり抑えることができる。第二にローンの支払いがない為、住居費のランニングコストが極端に安くなる。(固定資産税と積立修繕費くらい。)それにより、節約できたお金を投資に回すことができる。(もちろん、分譲物件を現金払いできる程の蓄えがあるといった場合でも賃貸で行くという選択肢はあるが、賃貸が分譲より得になる為にはそれなりのリスクをとった上でそれなりの利回りでその持ち金を運用する必要がある。)加えて、ローンから解放されることにより、上記の精神面における心配がすべて払拭できる点は大きい。

3.ローンを組んですぐに死亡した場合

もちろん考えたくないケースであるが、団体信用生命保険付きのローンを組んで間もなく、不幸にも名義人が死亡した場合はローンがちゃらになる為、上記2.の場合と似た結果となる。但し、名義人(多くの場合稼ぎ頭)がいなくなってしまうことは、以後の収入が減ることに留まらず、家庭にとって何にも代えがたいデメリットであることは間違いないが。。


すでにお気付きと思うが、要はどの点に重きを置くかで買うべきか借りるべきかは変わってくる。
次週は、いよいよ本論。私自身をケースに、分譲か賃貸、どちらが勝るのかを総合的に検討する。


参考

[1] 築年数から見た首都圏の不動産流通市場(東日本不動産流通機構)
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_201003.pdf

[2] 中古マンション査定NAVI(不動産流通近代化センターの中古マンションによる築年数と価格査定)
http://www.shirokumasan.net/satei/2007/10/post_7.html

October 23, 2010

【賃貸vs分譲 永遠のテーマに終止符を】モデルケース分析


今回から、3週に渡って分譲と賃貸について考えてみる。まずは具体的に考える為に両者の経済的側面についてモデルケースに基づいて考える。次にお金に換算できない定性的な価値も含めて両者の長短を考える。最後にそれらを包括的に考えたときどちらの方が私にとって価値があるのか考える。

分譲か賃貸かという選択の上で、切っても切れないのが損得勘定の議論である。結果から言うと、損か得かなどはもちろん選択をする時点では分からない。その後の様々な状況変化によって、結果はいかようにも変わるものである。それでも、分譲マンションの高い長期ローンを組む前に一度、妥当と思われる想定に基づいて試算をしてみることは決して無駄ではない。ここでは、60歳時点における住居に関する支払総額の比較を検討してみる。(今回の比較は都心に近い都内を想定している為、分譲とは分譲マンションということで、一戸建てではありません。)

【モデルケース:支払総額の比較】

設定
[分譲・賃貸共通]
- 30-60歳までの30年で試算
- 分譲と賃貸は同駅、同じ間取りの部屋を想定
- 30歳時の持ち金800万円
- インフレ率0.5%/年
[分譲]
- 購入する分譲マンションは新築の3500万円
- 頭金700万円
- 住宅ローン2800万円(30年ローン、固定金利3%、元利均等返済、ボーナス返済無)→返済総額4250万円(元金2800万円+利息1450万円) [1]
- 購入経費(仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、ローン手数料、保証料)は購入価格の約3%、100万円
- 固定資産税+積立修繕費は30万円/年
- 15年に1度、200万円のリフォーム
- 30年後の資産価値は購入価格の37.5% [2]
[賃貸]
- 賃貸マンションの賃料15万円/月(管理費1万円/月を含む)
- 2年に1回の契約更新料は賃料の1カ月分
- 10年に1回の引っ越す(引越し費用は賃料の6カ月分)
- 同じ家賃の物件に引っ越す
- インフレによる賃料の上昇は0.5%/年


初年度支払総額について
[分譲] 頭金(700万)+購入経費(100万)=800万
[賃貸] 引越し費用のみ=90万
分譲はこの時点で、持ち金はゼロ、賃貸は710万円が現金として残る。

以降の一年当たりのランニングコストについて
[分譲] ローン返済(142万)+固定資産税・積立修繕費(30万)+リフォーム(13万)=約185万円
(但し、最初の10年分住宅ローン減税で総額245万円を支払総額から控除)
[賃貸] 賃料(180万)+契約更新料(7.5万)+引越し費用(9万)=約196.5万円
(インフレにより、これらの費用は年0.5%上昇する)

これらを累積していくと、50歳までは賃貸の方が支払総額は少なく済み、50歳時点において分譲の支払総額が4218万円、賃貸の支払総額が4217万円とほぼ同額になり、それ以降は賃貸の支払総額が分譲を上回る。

結果、60歳時点における支払総額は、[分譲] 6174万円、[賃貸] 6440万円となった。

以上の設定に基づくと、60歳時点において賃貸の方が266万円支払総額が少ないので得ということになる。がしかし事はそうも簡単ではない。最初に述べたように、想定条件が変わるとどちらがどれくらい優位かは大きく変わる。不確定な将来、どの要素がどれくらい変わるかはだれも正確に予想することはできない。ただ少なくとも、どの要素が支払総額に及ぼす影響が大きいかを特定することは可能である。

【モデルケース:感度分析】

支払総額に影響を及ぼす要素として、インフレ率、分譲マンションの購入価格、頭金、ローン利率、ローン期間、30年後の資産価値の割合、賃貸の賃料、引越し費用を考える。これらの各要素が10%改善した場合、支払総額は何%改善するのかを試算した結果が以下である。但し、支払総額の改善率を考える上で、一つの要素を10%良い方向に変化させた時、その他の要素は一定とした。

パーセントを具体的にみる前に、その大きさの程度を把握しよう。支払総額は大まかに6000万円ということから10%の改善は支払総額にして600万円程度のインパクトである。例えば、賃料を15万円から13.5万円に抑えることにより、6440万円の支払総額は約620万円減り5817万円になる。また、3500万円の分譲価格が3150万円になれば、6174万円の支払総額は約500万円減り5673万円になる。


賃貸において最も影響の大きい要素は賃料である。支払総額のほぼ全て(家賃、契約更新料、引越し費用)が賃料にリンクしているので、賃料が安くなれば、支払総額はそれとほぼ同等の割合で安くあがる。分譲においては分譲マンションの購入価格が支払総額の大部分を占めるローン総額に大きく寄与する為、最も影響が大きい。つまり、支払総額を安くするには、なるべく安い賃料の賃貸もしくは、なるべく安い価格の分譲物件にするというのが最重要ということである。逆もしかりで、それらが高額になれば、その分大きく支払総額に跳ね返ってくることになる。

以上の結果からいくつか有益な示唆が得られる。まず、頭金に比べてローン期間の改善率の方がはるかに大きいことから、頭金の額を大きくすること自体にあまり意味はなく、ローンの期間を短くすることの方が効果的ということが言える。

また、分譲と賃貸の場合のインフレによる影響を比べると分譲の方がインフレの影響を受けにくいということが分かる。考えてみれば当たり前だが、分譲の場合、ローンが固定金利である以上、向こう30年の支払額が固定されるので、インフレの影響はほとんど受けない。一方賃貸は影響力の大きい賃料が上昇することになるので、分譲と比べてインフレによる影響は大きい。分譲はインフレヘッジになると言えるが、他の要素に比べて影響の度合いが依然低いことから、ハイパーインフレにならない限り、その影響は限定的である。


以上のモデルケースから、大まかに次のことが言える。
1.分譲の場合、支払総額は分譲の購入価格によって大きく変わる
2.賃貸の場合、支払総額は賃料によって大きく変わる
3.それらの条件が変わることで、60歳時点で分譲と賃貸のどちらが損か得も変わる

次週は、私見を交えて今回のモデルで考慮されていない定性的な要素を含めて分譲と賃貸の長所と短所を考える。

参考:
[1] ローン返済額はイーローン住宅ローンシミュレーションに基づく
http://www.eloan.co.jp/simulation/homecalc.jsp
[2] 30年後の資産価値の割合は築年帯別平均成約価格(東日本レインズ2009年)に基づく
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_201003.pdf

October 8, 2010

【個人輸入奮闘記】3.ついに、入庫・通関・目的地到着!!


待ちに待った荷物が日本に到着し、大井埠頭の倉庫に保管されているという旨の連絡が、日本側の荷物受入れ海運業者(Bシッピング(仮名))からきた。
Bシッピングに問い合わせたところ、倉庫から荷物を引き取るには、Bシッピングから送られてきたArrival Notice(荷物到着案内書)とB/L原本(船荷証書)[1] なるものが必要と言われた。初めての個人輸入・通関手続きだった為、B/Lと言われても全く何のことやら。。ウェブで調べたり電話で問い合わせたところ、荷物をきちんと船に載せたという証明でありかつその荷物を引き渡すことを約束する書類で、荷物同様、非常に重要な有価証券であることが判明。
B/Lとは何かがわかったものの、さらに大きな問題が発覚。荷物の引き取りにはB/Lは原本でなくてはいけないというのである、その時私の手元にはB/Lの原本が手元になかったのである!!本来であれば、ドイツ側の海運会社が証書を発行し、ドイツの家具屋を経由して、商品の日本到着以前に、私に送られてきていなければならないB/Lの原本が今無いのである。つまり、荷物は日本に届いたものの、通関手続きが出来ない為、倉庫から出すことができないのである。都合の悪いことに、倉庫では荷物の保管が10日間を過ぎると4600円/日もの超過保管料をとられる始末。。色々考えたあげく他に手段がなかったので、その旨ドイツの家具屋に伝え、すぐさま航空便のエクスプレスメールで原本を送るように依頼しました。原本がようやく到着したのは13日後。(B/Lが事前に送られてこなかったのは家具屋の責任だった為、結局かかった超過保管料6万円近くはあっち持ちということにさせました。)
通関に何が必要か全くの無知だった私と荷物受入れの手配に不備のあった家具屋のおかげで、待ちに待ったその日は遅れたものの、必要書類がそろった為いよいよ荷物通関・受け取りの日が来ました。引受人(私)本人でないと手続きがかなり面倒になるということだったので、その日は仕事をお休みして、大型トラックを引き連れ大井埠頭に向かいました。


以下に当日の諸手続きを時系列で説明します。


1. 日本側の海運業者(Bシッピング)でD/O[2] をもらう
必要なもの:Arrival Notice, B/L(原本), CFS支払代金(コンテナから出して倉庫へ移動する手数料)

芝浦にあるBシッピングに行き、上記書類と支払いと引き換えにD/Oをもらう

2. 東京税関大井出張所にて通関手続き
必要なもの:D/O, Invoice(販売元からの請求書), 関税・消費税等々の支払代金

2-1. 荷物は本当に届いていて倉庫にあるのか存在確認
税関職員の方がやってくれます。

2-2. 関税・消費税等の計算
諸々の税率については、Inoviceに基づいて税関の職員の方が計算してくれます。
家具については関税は無税ですが5%の消費税が発生します。(他の製品の税率については東京税関に問い合わせれば、教えてもらえます。)

2-3. 輸入申告書の作成・提出
税率の計算ができたら、それに基づいて輸入申告書を作成します。(税関の職員の方が、丁寧に作成を手伝ってくれます。)

2-4. 輸入申告書の書類審査と荷物検査
税関が輸入申告書を審査し、記載内容に不備等あれば、質問・確認されます。また、必要に応じて荷物のX線検査を求められることもあります。(これに該当してしまうとかなり厄介!)
私の場合、幸いにも特に不備、検査の要求も無くスムーズに審査が終了しました。運が悪く検査を求められたら、それは大変です。というのも大きな荷物ということになると、大型X線検査の設備が東京税関(お台場)にしかないので、そこまで荷物を運んで検査を受けに行かなくてはならず、その検査自体もかなり時間がかかるということでした。

2-5. 納税
関税・消費税等を納めます。もちろん現金しか受け付けないので、それなりの金額の準備が必要です。

2-6. 輸入許可証の受領
納税まで済んだら、納付領収証書と引き換えに輸入申告書に許可と押印された書類(輸入許可証)がもらえます。

3. 倉庫にて荷物の搬出
必要なもの:輸入許可証,D/O,保管料の支払代金

私のケースのように、保管延長した場合は追加保管料を支払います。支払が済むと倉庫から荷物を出してもらえます。(すぐに出てくるわけでなく、順番待ちがあるので1-2時間は待たされます。)大きい荷物の場合、フォークリフトで運び出されてきて積載することになるので、荷物が余裕を持って載せられるトラックで倉庫に向かう必要があります。

荷物を無事積載して、大井埠頭を出たのが午後3時。荷物を最終目的地まで、運搬、到着したころにはすでに日が暮れていました。抜き打ちX線検査は免れたものの、B/LとD/O引き換えから始めたので、本当に一日仕事でした。目的地に無事荷降ろしを終えるやいなや木箱を開封し、きちんと注文したものが入っているか検品しました。色も数も間違いなく、運送中のダメージもなく全てOKでした!一年以上にわたる個人輸入の苦労がまさに報われた瞬間でした!!


その後、家具屋からは商品代金とは別に、運送費が別途請求されてきたのですが、相手側の責による保管超過量を差し引いた分しか送金しないと言い張り、差額を精算することで、全ての取引は終了しました。


手間と時間と労力(+いいかげんな販売元との取引による心労)を考慮せず金額のみ比較すると、商品代金、送料、輸入消費税、超過保管料を含めた、個人輸入した場合の支払合計は約180万円(平均レート130円/ユーロ)でした。 大手輸入家具、○塚家具を通して配達まで依頼した場合の見積もりは、なんと約その倍の350万円でした。私の場合、全く右も左も分からない素人が、家具屋を見つけるところから、購入から輸入までを自力でやった為、時間も手間もかかったのですが、知識・経験の豊富なプロが規模の経済性(コンテナ丸ごと自社輸入品で輸入、自社倉庫を利用等)をてこに輸入を行えば、さらに輸入原価を抑えることができるでしょう。いい商売です。日本の大手輸入家具屋が、それだけの粗利をとっているというのは、それだけ他の営業コストがかかっている事の裏返しでしょう。都心にあれだけの広大な敷地を持ち、販売員が専属で付いて、家具の展示販売をしているのも、商品にのったその粗利と辻褄が合います。

初めての個人輸入における全てのプロセスは非常に良い勉強になりました。どの程度手間がかかるのか、何を事前に確認しておかなくてはいけないのか、輸入販売店を通した場合との価格差などなど。自分で輸入しようと思う何かが今後出てくるかさだかではありませんが、この貴重な経験を記録に残すことで、これから果敢にも個人輸入に挑戦しようと思っている方の一助になればと思います。


ここだけはおさえよう:
・商品が日本に届く前に、通関に必要な書類(B/L原本、Invoice)をすべて手元にそろえておくこと。
・通関は抜き打ちX線検査がなかったとしても丸一日かかることを覚悟すること。
・商品代金が大きい場合は、時間と労力を割いてまで個人輸入することによる価格面でのメリットは大きくなる。(商品によっては関税率が高いものもあるので、事前に調べる必要があります。)



[1] B/L (Bill of Lading) 船荷証券:

運送人が荷送人との間に於ける運送契約に基づいて、貨物を受け取り、船積みしたことを証明する書類で、荷送人の請求によって運送人が発行する。 B/Lは次のような性格を有している。(1)物品の(海上、複合)受取証、運送契約書 (2)貨物の引き渡しに際し必要となる引換証 (3)貿易代金決済の為、荷為替を取り組む場合に必要となる、“荷”を表象する有価証券。このB/Lは通常、輸出者からEMSで届きます。原本でないとDelivery Order(荷渡し指図書)と引き換えできません。












[2] D/O (Delivery Order) 荷渡し指図書:


船会社が貨物の引き渡しを指示する書類。貨物の引き渡しは、本来、B/Lと引き換えに行われるべきものであるが、実務上、船会社は荷受人からのB/L提出と引き換えにD/Oを発行交付し、荷受人はこれを提示して貨物の引き渡しを行う。











【参考:図解 これ1冊でぜんぶわかる! 貿易実務
私も参考にさせて頂いた、ジェトロ認定貿易アドバイザーの方による本格的な貿易実務書です。
専門用語の平易な解説やトラブル事例など大変参考になりました!

August 29, 2010

【MBAの歩き方】 3.留学形態(企業派遣と私費留学)

どのMBAプログラムで学ぼうか?という質問と同時進行で考えなくてはいけないのが、誰のお金で、どういう立場で留学するかという留学形態の問題です。(仕事を続けながらMBAにパートタイムとして通うという形態を除き、あくまで仕事をいったん休止してフルタイムで勉強する形態についての話に限定させていただきます。)

会社を辞めずにフルタイムのMBA留学をされる方のほとんどは、企業がスポンサーとなる社費留学の形態になります。所属の会社を辞めずに休職して、私費で留学するという方も中にはいますが極めて稀です。長期休職を認めてくれる会社が少ない(たとえ認められたとしても休職の期間が1年と限られる場合が多い)ことと、認められたとしても会社側がその人に復職後のポジションを確約できないということが主な理由です。

そのような理由で会社に属しながらフルタイムMBAを自費で留学というケースは少なく、フルタイムに関するほとんどのMBA留学形態は2パターンに分かれます。
A) 企業を辞めて、私費で留学する or B) 企業から派遣される形で、社費で留学する。
どちらも一長一短があり、どの留学形態が自分の「どうしてMBAなのか?」によりフィットするかをよく考える必要があります。主な懸案事項である、経済的負担の問題とMBA後のキャリアの選択肢の問題についてみてみましょう。

[経済的負担の問題]

前回取り上げた費用の問題はMBA取得に常についてまわる問題です。企業派遣であれば、学費はもちろん場合によっては生活費の一部(テキスト購入費用や住居費など)も企業が負担してくれます。一方、私費留学は留学にかかる関連費用を全て自費で賄わなければなりません。奨学金制度等を利用するのも一つの手ですが、よほど出願時の成績が良い等の事情がない限り、返済義務のある奨学金を利用するというのが現実です。この私費と社費の留学という大きな経済的負担の差は、留学中に如実に現れます。プール付き高級アパートメントvs. 大学の寮のルームシェアや新品の教科書vs. 友人の教科書のコピー、学期間余暇の海外旅行 vs. 近場の街探索、といった留学中の生活の質の差をひしひしと感じることになります。私費留学の場合、辞職してフリーの身なので定期的な収入がなく相当の蓄えをもって留学に望まない限り、留学中質素倹約を迫られることになります。

[MBA後のキャリア選択肢の問題]

それでは、もし私費・社費両方の形態を選べる状況にあった場合、私費留学のメリットとはなんでしょうか?私費と社費では、MBA卒業後のキャリア選択肢の自由度が大きく違い、私費留学であれば好きな道を自ら選択できるという利点があります。スポンサーである企業から派遣される多くの場合、留学費用を補助するかわりに卒業後所属企業に戻り、一定期間は会社を辞めることはできない「縛り」を契約として結ばされる場合がほとんどです。一定期間は企業によりまちまちですが、日系企業だと3-5年位が一般的です。社員育成の一環として派遣留学させるという投資をする企業としては、その投資の成果をきちんと回収しなくてはいけないのは当然です。この「縛り」が社費で留学するかどうか検討する際に一番重要な条件になってきます。MBAの動機がキャリアチェンジにあったとするならば、縛りがついてくる企業派遣よりもコスト増のデメリットを差し引いても、私費留学の方がその人にはマッチしているということになるでしょう。ただし、この契約も絶対の法的拘束力があるわけでなく、MBA後の縛りの期間中に退職する方もいます。その場合は、通常契約条項に盛り込まれているのですが、企業が補助した費用を全額返金しなければなりません。

私の前職の会社はMBA派遣制度がなかった為、私費で行くしかなかったのですが、会社を辞めるか、休職するかは自ら選ぶことが出来ました。MBAプログラムから入学許可が届いた後に、留学を決めたということを当時の部長に相談したところ、休職という手もあるが1年しか認められないということと、復職後のポジションについては確約できない(同じ部署にそれだけの仕事があり、人員の需要があるかは約束できない)ことを伝えられました。結局、技術者からの脱皮したいという自分の留学の動機と照らし合わせ考えた結果、会社を辞めて私費で留学することに決めました。

最後に、企業派遣か私費留学かという形態の問題は、MBA準備中、勉強中、卒後の拘束期間中に関わってくるだけで、それ以降は履歴書に出てくることも無くほとんど問題になることはありません。

March 24, 2010

【個人輸入奮闘記】2.石橋を叩いて発注

新たに見つけたデュッセルドルフの家具屋には一度も自ら足を運ぶことなく(もちろん担当者がどんな人かもわからぬまま)商品仕様を伝え、その数日後メールが届いた。見積もりといっても費用明細がきちんと纏まった書面といったものではなく、いくつかの数字がメールの文面にベタ打ちされた程度のものだった。記載されていたのは、商品代金、船便の輸送代など最低限の情報のみ。出てきた見積もりの額は予想通り、日本の大塚家具で調べた見積もりから半額近い値段であった!取引の額が額なのでその差は大きかったが、日本価格との安さだけで跳びついてはいけないと自分に言い聞かせ、ありとあらゆる考え得る質問を担当者になげた。
(以下質問と回答)

- 製造と輸送にかかる日数は?
製造に8週間、船便の輸送に約6週間(実際は発注から日本到着まで約半年かかった)

- 完成製品の梱包方法は?
商品を木枠で覆う(upholstered)梱包…€110

- 頭金と残金の支払方法は?
頭金として€2,000、残金は商品が完成した時点で請求

- 商品代金に付加価値税(VAT)は含まれているのか?VATの払い戻しは可能か?
商品代金にVAT(19%)は含まれる。払い戻しは可能とのこと
ドイツではVATとして19%もかかる為、この払い戻しは非常に大きい。諸事の理由から、商品代金からあらかじめ先方で、その19%を割り引いた価格で見積もりを出しなおしてもらった)

- ドイツ側の通関費用は?
少しかかるとのことだったが、なぜか請求には含まれておらず、商品代金内で吸収してもらえたのかも!?

- 輸送の際の紛失・損害保険は?
保険は紛失・損害をカバーし、商品総額の0.25%(安すぎる気がした。結局この保険代も最終請求に含まれていなかったので、運送に際し保険に入っていたのかすら謎。)

- 日本のどこに到着するのか?到着したらどうやって知らされるのか?
東京に到着。どうやって知らされるのかについては、最後まで分からなかった。。

全ての事が初めてなので、取引完了までの流れを自分なりに想像するのだが、疑問は尽きない。最悪、お金を振り込んだものの、そのままドロンというリスクも無いとは言い切れない。実際工場でソファーが完成したら現地に赴き、それがきちんとコンテナに入り、船に乗るまでを自分の目で確認しようかとさえ、本気で思った。その迷いを消すがごとく、考え得るありとあらゆる不明点をクリアにしようと、メールのやり取りは絶えることがなかった為、担当者もしびれを切らしたのか、本当に発注する気があるのかと半ばキレ気味だった。(実在するのかも分からない極東の日本人とメールだけのやり取りだったので、向こうの言い分も分からなくもないが、何もキレなくても。。)
費やすこと2カ月余り、いよいよ一通りの質問にメールという記録に残る形で答えが返ってきた。送料・通関手数料諸々を入れても日本での価格より、はるかに安かったので、リスクは重々承知の上、正式に発注することを決心した。発注後、即頭金の振込を済ませた。
約10週間後、商品が出来たので残金を振り込んでくれという連絡を受けた。
さらに待つこと約12週間(言っていたよりだいぶ時間がかかったが、、)とうとう、待望の電話が鳴った。品物がドイツのハンブルグから届いていて、東京は大井の倉庫に保管されているとの旨の連絡が日本の通関業者から入った。注文した仕様通りのものが届いているのか(最悪、箱が空でないことを願って)を確かめにすぐにでも倉庫に行きたい気持ちが先行したが、ここで大きな問題が!!貨物の受け取りに必要な『重要書類』が手元に無かったのである!!
(つづく)

ここだけはおさえよう:
・商品代金だけでなく、梱包費用、輸送費用、現地消費税、関税、通関手数料、保険等、輸入にかかる総額をきちんと発注前に記録に残る形(メールor書面)で出してもらうこと
・くどい(クレイジーな日本人)と思われようともしつこいくらい質問することにより、担当者がどの程度食らい付いてくるか確かめるとともに、こっちも本気であることを分からせる


【参考:http://www.auk.co.jp/knowledge/word/alphabet_b.html


【参考:図解 これ1冊でぜんぶわかる! 貿易実務
私も参考にさせて頂いた、ジェトロ認定貿易アドバイザーの方による本格的な貿易実務書です。
専門用語の平易な解説やトラブル事例など大変参考になりました!

March 16, 2010

【MBAの歩き方】 2.MBAプログラム選択

前回、MBAを検討するにあたってでは「どうしてMBAなのか?」をきちんと整理し、出来上がった骨太の動機を他の代替手段と照らし合わせることが重要であると説明しました。それでもMBAということであれば、次に直面するのは「ではどのMBAを目指すか?」という疑問です。これは、高校生に「自分にとっての適職とは?」と尋ねたり、結婚を考えている人に「自分にとってベストな、生涯の伴侶とは?」と尋ねるといった質問と同程度に難しい(正解・不正解の無い)問題だと思います。私自身、自分が学んだMBAプログラムがその時最善の選択だったのかは未だに分かりません。(その答えを造りあげているのはまさに今だからです。)唯、現時点で間違いなく言えることはそのプログラムで学べたことに非常に満足しているということです。

正解のない選択肢の中から、自分を最も満足させてくれるMBAプログラムを探し出すには、ランキングやブランド等の一面的な情報に偏るのでなく、本当に自分の「骨太の動機に見合っているかどうかを多面的に」検討することが重要です。数ある検討事項の中から伝えたい重要な検討事項は:

1)プログラムの特徴
2)プログラムのロケーションと使用言語
3)必要期間と経費

です。

1)そのプログラムは自分の学習の興味に合っているか?
MBAと一口にいっても学びの対象は本当に多岐にわたります。ファイナンスから人事・組織論、経営戦略、IT、マーケティング、ベンチャー等々。個々のプログラムによってどの分野に強いのか特徴があります。プログラムがある特定の分野に強いと言われる所以の一つは、その分野で著名な教授がいるということが挙げられます。ノースウェスタン大学のケロッグがマーケティングに強いと言われる所以はフィリップ・コトラー教授がいるからでしょう。ペンシルベニア大学のウォートンがファイナンスに強いと言われるのは看板フランクリン・アレン教授がいるからでしょう。第二にプログラムの立地が挙げられます。スタンフォードがベンチャーに強いのは言わずもがな周囲にシリコンバレーを抱えているからでしょう。特定の分野に強いと言われるプログラムには自然とその分野での学習を熱望するモチベーションの高い学生が集まります。

2)そのプログラム、どこの場所、国で学べるのか?
日本人視点から考えると、大まかに日本語で経営学を学ぶという環境と、外国語(ビジネスである以上英語が主)で学ぶ環境に分けられると思います。ビジネスと合わせて英語を勉強したいという気持ちで、英語力半ばにして英語環境を選ぶのは道中かなりの負担を強いられることになります。出願時のTOEFL・GMATで苦戦を強いられるのはもちろん、授業についていけない、他学生や教授とのディスカッションに入れない、課題が消化しきれない等、ビジネスを勉強するという目的に至る以前の段階でつまずく恐れがあります。英語環境に身を置いて経営学を勉強するには、基本的な英語力があることが前提となります。(出願時にTOEFLなりGMATを要求するのはそういった理由からです。)語学はさておき日本語で経営学について勉強したいという方は、国内のビジネススクールという選択になります。実際、プログラムでの使用言語の違いというのは勉強内容の違いにも関係してきます。国内において日本語で行うMBAは教材として日本語のケースを用いる場合が多くあります。もちろんそのような教材は作者も日本人であることがほとんどなので、必然的にケースに日本の経営エッセンスが詰め込まれています。日本流の経営学を学びたいということであれば、日本語で書かれた日系企業のケースに多く触れることのできる国内MBAプログラムというのは価値があるでしょう。一方、海外MBAの場合はその逆で、使われるケースは世界共通言語である英語で書かれており、様々な著者による多種多様なケースに触れることができます。聞いたこともないような企業でも海外では代表的優良企業を題材とすることも頻繁にある為、その企業についての背景知識のあるなしで読み込みの深さが変わってきます。初耳の企業分析に好奇心が湧き、それを楽しめる人には、課題消化に多少時間がかかるものの得るものは大きいと思います。私の場合、日本でまだ認知度の低い、英国スーパー最大手「テスコ」の店舗展開戦略や香港商社最大手の「利豊(Li & Fung)」のサプライチェーンマネージメントなど非常に興味深いケースに触れることができました。

3)そのプログラムでは期間と予算はどの程度必要か?
具体的な数字の検討も欠かすことはできません。ざっくりですがMBAプログラムも期間と費用でいくつかのカテゴリーに分かれます。


最も費用・期間のかかる欧米トップ・プライベートスクールの2年制プログラムから、短期で費用も抑えられる国内の1年制プログラムまで選択肢は多岐にわたります。やはり留学という選択は大きな投資となってきます。一方、日本での1年プログラムというのは最も小さい投資ということになるでしょう。一言でMBAといってもそのプログラム体系には種々あります。それに加えて各人が費用をどう工面するのか、企業派遣という形で授業料はもちろん生活費の一部まで負担してもらえるのか、もしくは会社を辞め勉強に専念するということで完全に自費で賄う自費留学となるのか、によって選択肢が必然的に絞られるということもあるでしょう。崇高な夢、壮大な動機を持ってMBAの検討を始めたものの、現実的な時間とお金の壁にぶつかって計画が頓挫してしまうという方も多いかと思います。しかし、自らの骨太の動機がMBAでしか成し遂げられないと思えた方には、ぜひそのような制約を乗り越えてほしいと思います。同じような制約条件をもったMBA志願者は世界に五万といて、需要あるところに商機があるというビジネスの基本にもれず、そのような要望に合ったMBAプログラムというのは必ず存在します。例えば、欧米に限らずアジアでも英語で1年のMBAプログラムというものも数多くあります。(図中のその他の国MBAがそれに該当します。)欧米に比べて物価の関係もあり、授業料・生活費が安く済む上、先進国にはない国勢と成長市場におけるビジネスに直に触れることができます。代表的なところでは、欧米のMBAプログラムも拠点を置くシンガポールや成長著しい上海、香港、オーストラリアにももちろん英語による優れたMBAプログラムが存在します。幸いにも企業派遣と自費留学いずれかを選べる立場にある方には次回、その長短について説明したいと思います。

以上の3つのポイントについては、ウェブや雑誌など公にされている情報からもある程度検討することは可能かもしれません。しかしながら往々にして、プログラムの誇張がかった宣伝であったり、ウェブの書き込み情報が古かったり等、情報の公平性や精度が今一つだったりすることもあります。その為、時間が許す限り生の情報に触れ、実際にプログラムの本音を丁寧に調べ上げることをお勧めします。志望に際してモチベーションも上がりますし出願時のエッセイの肉付けにもなります。 使える主な情報ソースとして、1.MBAフェア 2.オープンキャンパス 3.アラムナイ(卒業生)面談があります。

1.MBAフェア
長所:一度にいくつものMBAプログラムがブースに並ぶので、いくつか同時に見て回れる上、比較できる。プログラム・ディレクター、採用担当者などが当日出席の場合もある。
短所:多少宣伝じみているところもあるので、説明担当者によってはプログラムのウリしか聞けない。混んでいて、ゆっくりと話を聞くことができない。相手に印象を残しにくい。
「日本で開催の主なMBAフェア」
QS World MBA Tour
The MBA Tour

2.オープンキャンパス
長所:実際に学び舎となるインフラ(施設など)やその空気を感じることができる。多くのオープンキャンパスでは卒業生とのQ&Aセッションの機会を設けてくれているので直接具体的な質問もできます。最大の利点は、事前にアポを段取っておくことで、プログラム・ディレクターに顔を通しておくことができるということ。後にキーとなるのですが出願選考には通常プログラム・ディレクターが何らかの権限を持って関わってきます。ディレクターによる面接を選考過程に課すプログラムも多々あります。そこで一度でも自ら足を運んでプログラムを見に来たという意欲をディレクターに刷り込むのは非常に効果的です。(時間が許せばですが、海外プログラムを志願する場合には極東のアジアという立地もあり、とりわけ有効となってきます。旅行がてらにでもオープンキャンパスの有無に関わらず、ディレクターに段取りをして、キャンパス訪問することをぜひお勧めします。日本からプログラムに興味を持ちわざわざキャンパス訪問に来てくれて担当者も嬉しくないはずがありません。)
短所:オープンキャンパスの開催時期が限定される。海外だと行くのに時間・費用がかかる。

3.アラムナイ(卒業生)面談
長所:忙しく、あまりお金もかけられないという方にはお勧めです。面談というと固い響きですが、実際はそのようなものでもなく、卒業生との食事を兼ねたざっくばらんな意見交換だったり、体験談の共有だったりします。大学の入試担当者からxxさんという有望な志願者(その時点でその人が出願をしているケースもあるし、見学に来ただけという段階の人もいる)が当プログラムに興味を持ってくれているが、少し会って話をしてくれないか?という形で紹介されるというケースが多くあります。志願者の方にとっても興味のあるプログラムの卒業生を身近に探すのはなかなか難しいようです。そういった場合はぜひ、プログラムの入試担当者に「誰か卒業生を紹介してもらえないか?」と聞いてみて下さい。断られることはまずないものと思います。建前上学校からの紹介であるものの、学外で、半ば非公式に話をするというスタンスですから、プログラムの長所だけに留まらず、改善点や他のプログラムの方が優れているであろう点などより中立的な立場から客観的な話が期待できると思います。(なぜならその卒業生も必ず志願者の方と同じ疑問を持ち、選択に迫られ、検討をしてきたからです。)プログラム卒業生にとってもアラムナイ面談を通じてMBA卒後にもネットワークが広がることは、MBAの最大の恩恵であり、無下に断るということはまずないでしょう。
短所:アラムナイを探すのにひと手間必要。