August 29, 2010

【MBAの歩き方】 3.留学形態(企業派遣と私費留学)

どのMBAプログラムで学ぼうか?という質問と同時進行で考えなくてはいけないのが、誰のお金で、どういう立場で留学するかという留学形態の問題です。(仕事を続けながらMBAにパートタイムとして通うという形態を除き、あくまで仕事をいったん休止してフルタイムで勉強する形態についての話に限定させていただきます。)

会社を辞めずにフルタイムのMBA留学をされる方のほとんどは、企業がスポンサーとなる社費留学の形態になります。所属の会社を辞めずに休職して、私費で留学するという方も中にはいますが極めて稀です。長期休職を認めてくれる会社が少ない(たとえ認められたとしても休職の期間が1年と限られる場合が多い)ことと、認められたとしても会社側がその人に復職後のポジションを確約できないということが主な理由です。

そのような理由で会社に属しながらフルタイムMBAを自費で留学というケースは少なく、フルタイムに関するほとんどのMBA留学形態は2パターンに分かれます。
A) 企業を辞めて、私費で留学する or B) 企業から派遣される形で、社費で留学する。
どちらも一長一短があり、どの留学形態が自分の「どうしてMBAなのか?」によりフィットするかをよく考える必要があります。主な懸案事項である、経済的負担の問題とMBA後のキャリアの選択肢の問題についてみてみましょう。

[経済的負担の問題]

前回取り上げた費用の問題はMBA取得に常についてまわる問題です。企業派遣であれば、学費はもちろん場合によっては生活費の一部(テキスト購入費用や住居費など)も企業が負担してくれます。一方、私費留学は留学にかかる関連費用を全て自費で賄わなければなりません。奨学金制度等を利用するのも一つの手ですが、よほど出願時の成績が良い等の事情がない限り、返済義務のある奨学金を利用するというのが現実です。この私費と社費の留学という大きな経済的負担の差は、留学中に如実に現れます。プール付き高級アパートメントvs. 大学の寮のルームシェアや新品の教科書vs. 友人の教科書のコピー、学期間余暇の海外旅行 vs. 近場の街探索、といった留学中の生活の質の差をひしひしと感じることになります。私費留学の場合、辞職してフリーの身なので定期的な収入がなく相当の蓄えをもって留学に望まない限り、留学中質素倹約を迫られることになります。

[MBA後のキャリア選択肢の問題]

それでは、もし私費・社費両方の形態を選べる状況にあった場合、私費留学のメリットとはなんでしょうか?私費と社費では、MBA卒業後のキャリア選択肢の自由度が大きく違い、私費留学であれば好きな道を自ら選択できるという利点があります。スポンサーである企業から派遣される多くの場合、留学費用を補助するかわりに卒業後所属企業に戻り、一定期間は会社を辞めることはできない「縛り」を契約として結ばされる場合がほとんどです。一定期間は企業によりまちまちですが、日系企業だと3-5年位が一般的です。社員育成の一環として派遣留学させるという投資をする企業としては、その投資の成果をきちんと回収しなくてはいけないのは当然です。この「縛り」が社費で留学するかどうか検討する際に一番重要な条件になってきます。MBAの動機がキャリアチェンジにあったとするならば、縛りがついてくる企業派遣よりもコスト増のデメリットを差し引いても、私費留学の方がその人にはマッチしているということになるでしょう。ただし、この契約も絶対の法的拘束力があるわけでなく、MBA後の縛りの期間中に退職する方もいます。その場合は、通常契約条項に盛り込まれているのですが、企業が補助した費用を全額返金しなければなりません。

私の前職の会社はMBA派遣制度がなかった為、私費で行くしかなかったのですが、会社を辞めるか、休職するかは自ら選ぶことが出来ました。MBAプログラムから入学許可が届いた後に、留学を決めたということを当時の部長に相談したところ、休職という手もあるが1年しか認められないということと、復職後のポジションについては確約できない(同じ部署にそれだけの仕事があり、人員の需要があるかは約束できない)ことを伝えられました。結局、技術者からの脱皮したいという自分の留学の動機と照らし合わせ考えた結果、会社を辞めて私費で留学することに決めました。

最後に、企業派遣か私費留学かという形態の問題は、MBA準備中、勉強中、卒後の拘束期間中に関わってくるだけで、それ以降は履歴書に出てくることも無くほとんど問題になることはありません。

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