December 31, 2021

社会的開拓者(Social Pioneer)のための栄養ドリンク LIFE SHIFT2(ライフ・シフト2)

前著「LIFE SHIFT」から5年。

その間、平成の時代が終わり令和が幕開けをし、誰も予期しなかった新型コロナウイルス感染症によるパンデミックが世界を一変しました。

前著が言っていた変わるべき時っていうのは、遠い未来の話ではなく、差し迫った今の話だと実感させられた本当に大きな変化が訪れた5年間でした。

続編「LIFE SHIFT2」は、そんな変化激しいこれからの時代、人間として開花する(長寿化と技術進歩を敵に回すのではなく味方につける)ためにはどんな行動をとるべきか教えてくれます。多くの研究や論文の裏付けを元に、不透明な未来を明るく照らし、人生100年時代を生きる活力を与えてくれる栄養ドリンクのような本でした。

本書は、いくつかの新しい視点を与えてくれました:

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①お金よりも大切にしたいアセット
長寿化の時代ではほんとうは長く働く必要があるのに、昨今巷では、FIRE(Financial Indipendence, Retire Early)が流行っている。が、皮肉にも、経済的独立っていう概念そのものがお金に縛られている考え方なんだよなぁ。

ダライ・ラマ14世はこう述べた。
「人は金を稼ぐために健康を犠牲にし、健康を取り戻すために金を犠牲にする。また、未来を心配しすぎるあまり、現在を楽しめない。その結果、現在を生きることも、未来を生きることもできないまま、真の意味で生きることがないまま死んでいく。」

100年時代を生きていくのに、お金は必要なものではあるが、お金と幸せは無関係である。幸福度により影響を与えるのは「温かい人間関係」である。

金銭面で未来の自分を苦境に立たせるのは避けたいが、それと同じくらい、学びの時間、移行を成功させる活力、健康、人間関係などを欠いた色褪せた人生を送ることも避けたい。

②年齢の捉え方
年齢に対する考え方を改める。

産まれてから何年経ったかという「暦年齢」ではなく、今の高齢者はこれまでになく若いという"年齢のインフレ"を踏まえた「実質年齢」ベースで物事をとらえるべき。
 
例えば、生後40年経つ人同士を同じ暦年齢だからといってひとくくりにするくらいなら、(死生学的年齢が同じ)余命50年の人同士をセグメント化して考える方が、よっぽど的を得ている。

アメリカの老年従属人口指数(一人の高齢者を何人の現役世代で支えているかという指数)も、年齢インフレを調整してきちんと分析すると、若者負担は増えてきているのではなく、むしろ下がってきている。

また、社会保障についても、平均寿命を過少評価してしまう「ピリオド平均寿命」に基づくのではなく、医学の進歩による死亡率低下を考慮した「コーホート平均寿命」に基づき、ちゃんと長く生きることを踏まえて再設計すべき。

ミレニアル世代とかZ世代とか、世代に呼称がつけられ始めたのと、3ステージの人生モデルが形成されたのは同時期ということからも明らかだが、そんな世代のとらえ方はオワコンである。

ついつい「若い人たちは...」って言ってしまうが、Age Harassmentはもってのほかということも忘れず肝に銘じたい。

③企業の立ち位置
人の働き方の自由度が高まったことにより、企業は従業員との関係よりも、顧客・株主との関係を重視するようになってきてしまっている。。

仕事上の学びの機会(人材開発)においても、その責任は企業側から従業員側に移ってきている。

④新時代の学び
長寿化に伴い生涯学習が不可欠となる。人生序盤の教育は特定の知識・スキルの獲得よりも、ずっと学び続けられるための土台を作るべき。また、シンボルとしての学位の価値は下がっていく。

生涯に渡って学び続けることになるが、子供と大人における学習の大きな違いは、大人においては「学習獲得」よりも、過去の成功体験や染みついた慣習を捨てる「学習棄却」が大切になってくる。

また、AI等の技術発展が進む世界では、先端技術の知識をキャッチアップすることも大事だが、それよりも、良きコーチたる能力、人を焚きつける術、心身状態への気配り、傾聴力、ビジョン発信等の人間的スキルの方がより重要になる。

新時代の学びって、いずれも言うは易く行うは難しなことばかりである。
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マルチステージの人生を送っていくということは、数多くの岐路が待っている人生でもある。分岐点に立った時、大きな変化が訪れた時、将来の見通しに悩んだ時に、イキイキと人間らしい人生を歩んでいくためにも、この本に立ち戻りたいと思いました。


アンドリュー・スコット、リンダ・グラットン
LIFE SHIFT2(ライフ・シフト2)