October 23, 2010

【賃貸vs分譲 永遠のテーマに終止符を】モデルケース分析


今回から、3週に渡って分譲と賃貸について考えてみる。まずは具体的に考える為に両者の経済的側面についてモデルケースに基づいて考える。次にお金に換算できない定性的な価値も含めて両者の長短を考える。最後にそれらを包括的に考えたときどちらの方が私にとって価値があるのか考える。

分譲か賃貸かという選択の上で、切っても切れないのが損得勘定の議論である。結果から言うと、損か得かなどはもちろん選択をする時点では分からない。その後の様々な状況変化によって、結果はいかようにも変わるものである。それでも、分譲マンションの高い長期ローンを組む前に一度、妥当と思われる想定に基づいて試算をしてみることは決して無駄ではない。ここでは、60歳時点における住居に関する支払総額の比較を検討してみる。(今回の比較は都心に近い都内を想定している為、分譲とは分譲マンションということで、一戸建てではありません。)

【モデルケース:支払総額の比較】

設定
[分譲・賃貸共通]
- 30-60歳までの30年で試算
- 分譲と賃貸は同駅、同じ間取りの部屋を想定
- 30歳時の持ち金800万円
- インフレ率0.5%/年
[分譲]
- 購入する分譲マンションは新築の3500万円
- 頭金700万円
- 住宅ローン2800万円(30年ローン、固定金利3%、元利均等返済、ボーナス返済無)→返済総額4250万円(元金2800万円+利息1450万円) [1]
- 購入経費(仲介手数料、登録免許税、不動産取得税、ローン手数料、保証料)は購入価格の約3%、100万円
- 固定資産税+積立修繕費は30万円/年
- 15年に1度、200万円のリフォーム
- 30年後の資産価値は購入価格の37.5% [2]
[賃貸]
- 賃貸マンションの賃料15万円/月(管理費1万円/月を含む)
- 2年に1回の契約更新料は賃料の1カ月分
- 10年に1回の引っ越す(引越し費用は賃料の6カ月分)
- 同じ家賃の物件に引っ越す
- インフレによる賃料の上昇は0.5%/年


初年度支払総額について
[分譲] 頭金(700万)+購入経費(100万)=800万
[賃貸] 引越し費用のみ=90万
分譲はこの時点で、持ち金はゼロ、賃貸は710万円が現金として残る。

以降の一年当たりのランニングコストについて
[分譲] ローン返済(142万)+固定資産税・積立修繕費(30万)+リフォーム(13万)=約185万円
(但し、最初の10年分住宅ローン減税で総額245万円を支払総額から控除)
[賃貸] 賃料(180万)+契約更新料(7.5万)+引越し費用(9万)=約196.5万円
(インフレにより、これらの費用は年0.5%上昇する)

これらを累積していくと、50歳までは賃貸の方が支払総額は少なく済み、50歳時点において分譲の支払総額が4218万円、賃貸の支払総額が4217万円とほぼ同額になり、それ以降は賃貸の支払総額が分譲を上回る。

結果、60歳時点における支払総額は、[分譲] 6174万円、[賃貸] 6440万円となった。

以上の設定に基づくと、60歳時点において賃貸の方が266万円支払総額が少ないので得ということになる。がしかし事はそうも簡単ではない。最初に述べたように、想定条件が変わるとどちらがどれくらい優位かは大きく変わる。不確定な将来、どの要素がどれくらい変わるかはだれも正確に予想することはできない。ただ少なくとも、どの要素が支払総額に及ぼす影響が大きいかを特定することは可能である。

【モデルケース:感度分析】

支払総額に影響を及ぼす要素として、インフレ率、分譲マンションの購入価格、頭金、ローン利率、ローン期間、30年後の資産価値の割合、賃貸の賃料、引越し費用を考える。これらの各要素が10%改善した場合、支払総額は何%改善するのかを試算した結果が以下である。但し、支払総額の改善率を考える上で、一つの要素を10%良い方向に変化させた時、その他の要素は一定とした。

パーセントを具体的にみる前に、その大きさの程度を把握しよう。支払総額は大まかに6000万円ということから10%の改善は支払総額にして600万円程度のインパクトである。例えば、賃料を15万円から13.5万円に抑えることにより、6440万円の支払総額は約620万円減り5817万円になる。また、3500万円の分譲価格が3150万円になれば、6174万円の支払総額は約500万円減り5673万円になる。


賃貸において最も影響の大きい要素は賃料である。支払総額のほぼ全て(家賃、契約更新料、引越し費用)が賃料にリンクしているので、賃料が安くなれば、支払総額はそれとほぼ同等の割合で安くあがる。分譲においては分譲マンションの購入価格が支払総額の大部分を占めるローン総額に大きく寄与する為、最も影響が大きい。つまり、支払総額を安くするには、なるべく安い賃料の賃貸もしくは、なるべく安い価格の分譲物件にするというのが最重要ということである。逆もしかりで、それらが高額になれば、その分大きく支払総額に跳ね返ってくることになる。

以上の結果からいくつか有益な示唆が得られる。まず、頭金に比べてローン期間の改善率の方がはるかに大きいことから、頭金の額を大きくすること自体にあまり意味はなく、ローンの期間を短くすることの方が効果的ということが言える。

また、分譲と賃貸の場合のインフレによる影響を比べると分譲の方がインフレの影響を受けにくいということが分かる。考えてみれば当たり前だが、分譲の場合、ローンが固定金利である以上、向こう30年の支払額が固定されるので、インフレの影響はほとんど受けない。一方賃貸は影響力の大きい賃料が上昇することになるので、分譲と比べてインフレによる影響は大きい。分譲はインフレヘッジになると言えるが、他の要素に比べて影響の度合いが依然低いことから、ハイパーインフレにならない限り、その影響は限定的である。


以上のモデルケースから、大まかに次のことが言える。
1.分譲の場合、支払総額は分譲の購入価格によって大きく変わる
2.賃貸の場合、支払総額は賃料によって大きく変わる
3.それらの条件が変わることで、60歳時点で分譲と賃貸のどちらが損か得も変わる

次週は、私見を交えて今回のモデルで考慮されていない定性的な要素を含めて分譲と賃貸の長所と短所を考える。

参考:
[1] ローン返済額はイーローン住宅ローンシミュレーションに基づく
http://www.eloan.co.jp/simulation/homecalc.jsp
[2] 30年後の資産価値の割合は築年帯別平均成約価格(東日本レインズ2009年)に基づく
http://www.reins.or.jp/pdf/trend/rt/rt_201003.pdf