March 16, 2010

【MBAの歩き方】 2.MBAプログラム選択

前回、MBAを検討するにあたってでは「どうしてMBAなのか?」をきちんと整理し、出来上がった骨太の動機を他の代替手段と照らし合わせることが重要であると説明しました。それでもMBAということであれば、次に直面するのは「ではどのMBAを目指すか?」という疑問です。これは、高校生に「自分にとっての適職とは?」と尋ねたり、結婚を考えている人に「自分にとってベストな、生涯の伴侶とは?」と尋ねるといった質問と同程度に難しい(正解・不正解の無い)問題だと思います。私自身、自分が学んだMBAプログラムがその時最善の選択だったのかは未だに分かりません。(その答えを造りあげているのはまさに今だからです。)唯、現時点で間違いなく言えることはそのプログラムで学べたことに非常に満足しているということです。

正解のない選択肢の中から、自分を最も満足させてくれるMBAプログラムを探し出すには、ランキングやブランド等の一面的な情報に偏るのでなく、本当に自分の「骨太の動機に見合っているかどうかを多面的に」検討することが重要です。数ある検討事項の中から伝えたい重要な検討事項は:

1)プログラムの特徴
2)プログラムのロケーションと使用言語
3)必要期間と経費

です。

1)そのプログラムは自分の学習の興味に合っているか?
MBAと一口にいっても学びの対象は本当に多岐にわたります。ファイナンスから人事・組織論、経営戦略、IT、マーケティング、ベンチャー等々。個々のプログラムによってどの分野に強いのか特徴があります。プログラムがある特定の分野に強いと言われる所以の一つは、その分野で著名な教授がいるということが挙げられます。ノースウェスタン大学のケロッグがマーケティングに強いと言われる所以はフィリップ・コトラー教授がいるからでしょう。ペンシルベニア大学のウォートンがファイナンスに強いと言われるのは看板フランクリン・アレン教授がいるからでしょう。第二にプログラムの立地が挙げられます。スタンフォードがベンチャーに強いのは言わずもがな周囲にシリコンバレーを抱えているからでしょう。特定の分野に強いと言われるプログラムには自然とその分野での学習を熱望するモチベーションの高い学生が集まります。

2)そのプログラム、どこの場所、国で学べるのか?
日本人視点から考えると、大まかに日本語で経営学を学ぶという環境と、外国語(ビジネスである以上英語が主)で学ぶ環境に分けられると思います。ビジネスと合わせて英語を勉強したいという気持ちで、英語力半ばにして英語環境を選ぶのは道中かなりの負担を強いられることになります。出願時のTOEFL・GMATで苦戦を強いられるのはもちろん、授業についていけない、他学生や教授とのディスカッションに入れない、課題が消化しきれない等、ビジネスを勉強するという目的に至る以前の段階でつまずく恐れがあります。英語環境に身を置いて経営学を勉強するには、基本的な英語力があることが前提となります。(出願時にTOEFLなりGMATを要求するのはそういった理由からです。)語学はさておき日本語で経営学について勉強したいという方は、国内のビジネススクールという選択になります。実際、プログラムでの使用言語の違いというのは勉強内容の違いにも関係してきます。国内において日本語で行うMBAは教材として日本語のケースを用いる場合が多くあります。もちろんそのような教材は作者も日本人であることがほとんどなので、必然的にケースに日本の経営エッセンスが詰め込まれています。日本流の経営学を学びたいということであれば、日本語で書かれた日系企業のケースに多く触れることのできる国内MBAプログラムというのは価値があるでしょう。一方、海外MBAの場合はその逆で、使われるケースは世界共通言語である英語で書かれており、様々な著者による多種多様なケースに触れることができます。聞いたこともないような企業でも海外では代表的優良企業を題材とすることも頻繁にある為、その企業についての背景知識のあるなしで読み込みの深さが変わってきます。初耳の企業分析に好奇心が湧き、それを楽しめる人には、課題消化に多少時間がかかるものの得るものは大きいと思います。私の場合、日本でまだ認知度の低い、英国スーパー最大手「テスコ」の店舗展開戦略や香港商社最大手の「利豊(Li & Fung)」のサプライチェーンマネージメントなど非常に興味深いケースに触れることができました。

3)そのプログラムでは期間と予算はどの程度必要か?
具体的な数字の検討も欠かすことはできません。ざっくりですがMBAプログラムも期間と費用でいくつかのカテゴリーに分かれます。


最も費用・期間のかかる欧米トップ・プライベートスクールの2年制プログラムから、短期で費用も抑えられる国内の1年制プログラムまで選択肢は多岐にわたります。やはり留学という選択は大きな投資となってきます。一方、日本での1年プログラムというのは最も小さい投資ということになるでしょう。一言でMBAといってもそのプログラム体系には種々あります。それに加えて各人が費用をどう工面するのか、企業派遣という形で授業料はもちろん生活費の一部まで負担してもらえるのか、もしくは会社を辞め勉強に専念するということで完全に自費で賄う自費留学となるのか、によって選択肢が必然的に絞られるということもあるでしょう。崇高な夢、壮大な動機を持ってMBAの検討を始めたものの、現実的な時間とお金の壁にぶつかって計画が頓挫してしまうという方も多いかと思います。しかし、自らの骨太の動機がMBAでしか成し遂げられないと思えた方には、ぜひそのような制約を乗り越えてほしいと思います。同じような制約条件をもったMBA志願者は世界に五万といて、需要あるところに商機があるというビジネスの基本にもれず、そのような要望に合ったMBAプログラムというのは必ず存在します。例えば、欧米に限らずアジアでも英語で1年のMBAプログラムというものも数多くあります。(図中のその他の国MBAがそれに該当します。)欧米に比べて物価の関係もあり、授業料・生活費が安く済む上、先進国にはない国勢と成長市場におけるビジネスに直に触れることができます。代表的なところでは、欧米のMBAプログラムも拠点を置くシンガポールや成長著しい上海、香港、オーストラリアにももちろん英語による優れたMBAプログラムが存在します。幸いにも企業派遣と自費留学いずれかを選べる立場にある方には次回、その長短について説明したいと思います。

以上の3つのポイントについては、ウェブや雑誌など公にされている情報からもある程度検討することは可能かもしれません。しかしながら往々にして、プログラムの誇張がかった宣伝であったり、ウェブの書き込み情報が古かったり等、情報の公平性や精度が今一つだったりすることもあります。その為、時間が許す限り生の情報に触れ、実際にプログラムの本音を丁寧に調べ上げることをお勧めします。志望に際してモチベーションも上がりますし出願時のエッセイの肉付けにもなります。 使える主な情報ソースとして、1.MBAフェア 2.オープンキャンパス 3.アラムナイ(卒業生)面談があります。

1.MBAフェア
長所:一度にいくつものMBAプログラムがブースに並ぶので、いくつか同時に見て回れる上、比較できる。プログラム・ディレクター、採用担当者などが当日出席の場合もある。
短所:多少宣伝じみているところもあるので、説明担当者によってはプログラムのウリしか聞けない。混んでいて、ゆっくりと話を聞くことができない。相手に印象を残しにくい。
「日本で開催の主なMBAフェア」
QS World MBA Tour
The MBA Tour

2.オープンキャンパス
長所:実際に学び舎となるインフラ(施設など)やその空気を感じることができる。多くのオープンキャンパスでは卒業生とのQ&Aセッションの機会を設けてくれているので直接具体的な質問もできます。最大の利点は、事前にアポを段取っておくことで、プログラム・ディレクターに顔を通しておくことができるということ。後にキーとなるのですが出願選考には通常プログラム・ディレクターが何らかの権限を持って関わってきます。ディレクターによる面接を選考過程に課すプログラムも多々あります。そこで一度でも自ら足を運んでプログラムを見に来たという意欲をディレクターに刷り込むのは非常に効果的です。(時間が許せばですが、海外プログラムを志願する場合には極東のアジアという立地もあり、とりわけ有効となってきます。旅行がてらにでもオープンキャンパスの有無に関わらず、ディレクターに段取りをして、キャンパス訪問することをぜひお勧めします。日本からプログラムに興味を持ちわざわざキャンパス訪問に来てくれて担当者も嬉しくないはずがありません。)
短所:オープンキャンパスの開催時期が限定される。海外だと行くのに時間・費用がかかる。

3.アラムナイ(卒業生)面談
長所:忙しく、あまりお金もかけられないという方にはお勧めです。面談というと固い響きですが、実際はそのようなものでもなく、卒業生との食事を兼ねたざっくばらんな意見交換だったり、体験談の共有だったりします。大学の入試担当者からxxさんという有望な志願者(その時点でその人が出願をしているケースもあるし、見学に来ただけという段階の人もいる)が当プログラムに興味を持ってくれているが、少し会って話をしてくれないか?という形で紹介されるというケースが多くあります。志願者の方にとっても興味のあるプログラムの卒業生を身近に探すのはなかなか難しいようです。そういった場合はぜひ、プログラムの入試担当者に「誰か卒業生を紹介してもらえないか?」と聞いてみて下さい。断られることはまずないものと思います。建前上学校からの紹介であるものの、学外で、半ば非公式に話をするというスタンスですから、プログラムの長所だけに留まらず、改善点や他のプログラムの方が優れているであろう点などより中立的な立場から客観的な話が期待できると思います。(なぜならその卒業生も必ず志願者の方と同じ疑問を持ち、選択に迫られ、検討をしてきたからです。)プログラム卒業生にとってもアラムナイ面談を通じてMBA卒後にもネットワークが広がることは、MBAの最大の恩恵であり、無下に断るということはまずないでしょう。
短所:アラムナイを探すのにひと手間必要。