December 19, 2016

あなたの子供は100歳まで生きるかもしれない LIFE SHIFT(ライフ・シフト)

「日本では2014年産まれの子の半数が109歳まで生きる」

100歳を超えると国からありがたい銀杯が貰えます。でもそんな銀杯もこれまで純銀製だったのが今年、銀メッキに格下げされちゃいました。この調子でいくと、2100年くらいには賞状一枚すら貰えなくなってるでしょう、きっと。

「100年ライフ」

遠いようで遠くない、けっこう身近に迫ってきてるんですよね。人生100年時代。
長くなる人生を災いではなく恩恵にするためは、これまで以上により大切になることがあるとこの本は言います:


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①選択肢の価値

不透明で変化が激しく、将来が予見しにくいような長い人生を生きることになると、
「選択肢を持っておく」ことがより重要になるそうです。

より多くの「聞いてないよー」級の変化を経験することになるので、そもそも、その時に「選べる」状況にあることが有利に働きます。
選択ミスをした場合とかも、長寿化にともない尾を引く期間も長くなるから、決断はどんどん先延ばしにされることでしょう。「本当に相性がいいものと出会うまでは」と皆、慎重になります。
晩婚化とかはそんな影響なのかもしれません。

金融の世界では選択肢はオプション(将来の決められた期日に予め決められた価格で特定の資産を売り買いする権利)といって値段がついて取引されています。
オプションの価格は幾つかの要素で計算されます。期間が長かったり予想変動率が大きかったりする程、オプション(選択肢)の値段は高くなります。
長くなったり、大きな変化が待ち受けていたりすると、選択肢の価値が増すってのは、金融の世界も人の人生も一緒なのかもしれません。


②自分探しの時間と経験

著者が「エクスプローラー」と呼ぶ自分探しの期間と経験が、後の人生を形作る大切な人生のいちピースになるといいます。

人間を人間たらしめる、遊びや即興。
一見無駄にみえるそうした行動によって、自らの価値観に気付いたり、アイデンティティや役割を考えます。目的の有り無しに関わらず、たとえ遊びであっても、育ってきた環境と全く異なる環境にどっぷりと身を置いて、他人の視点で考えたり共感する。その経験を通じて自分の軸を築いていくそうです。

大きな変化を柔軟に生き抜くための屋台骨をしっかりさせる為にも、自分探しのステージは今以上に大切になるでしょう。エクスプローラーは何もティーンエージャーといった未成年の時期に限らず、18-30歳とか、40代半ば、70-80歳の時期などに適している、と著者は言います。

我が身を振り替えると、大学卒業後アメリカをふらふらしていた時期がエクスプローラーのステージだったのかもしれません。(価値観、アイデンティティを発見したかは、さておき。。)
放浪の旅、モラトリアム、遊学を頭ごなしに否定したり、大人目線で効率を押し付けたりしないように気をつけようと思いました。


③余暇の配分

50年ほど前の1966年、日本の男女合わせた平均寿命は約70歳でした。

東京オリンピック直後の輝かしき時代。家族やプライベートの時間も顧みず身を粉にして働いた時代。定年まで務め上げ、リタイア後の残り10〜15年の余生を全く働かず余暇として過ごす、という生き方も全く違和感なく、ふつーだったかもしれません。
(ちなみに、当時は55歳以前が定年の主流でした。30年前の1986年に60歳定年の努力義務化の法律が制定。「人生長くなればなる程、働きましょう」なのでしょうか)

でも、そんな嘗てのようなリタイアを堺として100%仕事、100%余暇というモデルは、100年ライフにおいてはうまく機能しないでしょう。だって、60歳にリタイアしたとしても、余生が40年も残ることになります。長期化したアフターリタイアメントを楽しむには経済的にも身体的にも厳しくなるのは目に見えています。

つまり、余暇の多くを引退後にとっておくのではなく、人生全体に分散させましょう、と著者は言います。
そして、(特に若い期間に)散りばめた余暇はリクリエーション(たんなる娯楽)でなく、リ・クリエーション(マジメな勉強、資格取得に関わらず、上記のエクスプローラーも含む) として自分への投資に使った方がいいよ、って言ってます。
投資と一緒でまさに、余暇の長期分散投資です。働いてもらって、リターンをもたらしてもらう大切な資産という意味において、お金と時間は同じなのかもしれません。

この節を読んで思い出したのが、昔読んだノマド研究家 大石哲之さんのブログの「人生の時間軸を横に倒せ」のエントリーでした。
全く同じことがこのブログには綴られていて、「余暇の分散」を「人生の時間軸を横に倒す」と表現しています。

ちなみに、人類の長い歴史を振り返ると、テクノロジーの進化とか経済の豊かさとかの理由で労働時間は減ってきていて、その分余暇は増えてきているそうです。エンターテイメントなんて概念や産業が出て来たのも比較的最近のことだし。長寿化に伴い存在感を増す余暇をどういうふうに使うか!?っていう問題は、どう働くかと同程度かそれ以上に大切になるでしょう。

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この本はその他いろいろ面白いことについて述べていて、
シェアリングエコノミーがもっともっと幅を利かせるようになり、「持つ」ことの意味が変わる、とか。

この本の予測が正しければ、自分も半分の確率で98歳まで生きます。
さすがに3分の1は過ぎちゃったけど、それでもまだまだ残された時間は多く、
かなりの確率でこの本が予想する未来に突入していきます。

ましてや、自分の子供の世代になると、それはもっと現実味を増すでしょう。
長寿「100年ライフ」を災いでなく恩恵にできるよう、ちょこっとずつ、行動、考えをシフトさせていこうと思いました。



リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット
LIFE SHIFT(ライフシフト)

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