April 5, 2013

頑張りどころを間違わず、頑張れ新入社員!!


新入社員の皆さん、苦難の就活を乗り越え、ご入社おめでとうございます!

新社会人へのアドバイスというとおこがましいのですが、自分の経験に基づいてひとつメッセージがあります。

ぜひ、「何が厳密であるべきで、何がそうでなくてもよいのか」の目利きになりましょう。

もし私が「学生と社会人との最も大きな違いは?」と聞かれたら、迷わずこう答えるでしょう。

学生の行動原理は「どれだけ厳密たりうるか?」であり、社会人の(に必要な)それ「どれが厳密であるべきか?」とは大きく異なります。

学生は、論理立てて解答にたどり着くことのできる、「答えのある問題」の訓練をひたすら受けます。それはそれで崇高な、学生ならではの特権であり、教育という観点からも論理的思考を鍛ることのできる意味のあることです。

しかーし、社会人の世界はそうは問屋が卸しません。社会にある多くの問題には答えがありません。世の中の多くの問題は、「答えのない問題」であり、しかもそれらはより重要な問題であることが多いのです。

ビジネスマンが日々向き合う課題も、
実際にやってみなければ分からなかったり、
不測の出来事で当初の想定がくるってしまうことが明らかだったり、
そもそも、何を持って正解、成功なのか分からない問題がほとんどです。

そんな問題に立ち向かい、個人、企業として行動を起こしていかなければならないのが社会人です。

「答えのある問題」に取り組むには、論理に矛盾がないか、もれなく重複なく考えが及んでいるか、その精度は十分に高いのかが勝負になります。つまり厳密性が勝負の分かれ道になります。

一方、社会人として取り組まなくてはならない「答えのない問題」においては、厳密であることよりも、入り口で何が厳密で何がそうでなくてもよいのかをきちんと判断することの方が100倍重要で、厳密性でなく選択性が勝負の分かれ道になります。

たとえ事細かに厳密性を担保しながら進んで行っても、そもそもの入り口のところで間違った方向に進んでいたが為に、完全な無駄足になってしまったという例(厳密性の罠)は数多くあります。無駄足と気付いて途中で引き返せればまだましですが、たちの悪いのが、それが無駄足であるという事すら気付かずに突き進んでしまう場合です。

「答えのない問題」に満ち溢れた社会への船出を前に、とりわけ新入社員の方々に意識を切り替えてもらいたいのは、キャリアを積んだベテラン社会人でさえも、この厳密性の罠にハマってしまうからです。

どうして日本のメーカーはiphoneを作ることができなかったのでしょうか?

スマートフォン紀元前における日本の携帯電話メーカーは1社の例外もなく厳密性の罠にハマっていました。携帯電話の製品開発において重要だったのは、カメラの画素数であり、液晶の解像度でした。それをどれだけ厳密化できるかをこぞって競っていたのです。
「売れる携帯電話とは?」との問題に対して、「競合他社のスペックをいかに上回れるか?」にとらわれてしまっていたのです。誰も入り口に立ち返り「製品を作るうえで何を追求すべきか?」を顧客視点で考えませんでした。
問題解決において厳密性ではなく選択性がどれほど重要かを知り尽くしたアップルは違いました。顧客の望む(売れる)製品とは「厳密なスペックをもつ製品ではなく、直感的な操作性(ユーザー・インターフェイス)を持つセクシーな製品」であることを見抜き、みごと製品という形で具現化してみせたのです。

そもそも「答えのない問題」なので、何が厳密であるべきか(言い換えると、どこを頑張るべきか)も明確な答えはありません。それを決めるのが戦略です。iphoneが市場を席巻して初めて、学生の殻を破ることのできなかった日本の携帯電話メーカー陣はようやく自らが厳密性の罠にかかってしまったことに気付いたのでした。

厳密性の罠のもうひとつの例。
昨年の衆院選を受けて、昨今話題となっている、1票の格差問題です。

「法の下の平等にのっとったあるべき選挙のあり方とは?」というこれまた答えのない問題は、国が総力を挙げて(そもそも、どれだけ闘志があるのかは疑問ですが??)取り組む問題です。国の最高機関である議会や法曹界最高権力の最高裁を以てしても未解決の難題です。
有権者の法の下の平等を律儀に守る為に、国はこれまで様々な制度を展開してきました。その一つが選挙当日、投票所に足を運べない人への厳密すぎる程の対応です。
期日前投票はもちろん、不在者投票に関しても、国外在住の人に留まらず、入院患者や老人ホーム入居者に対する指定施設投票に至るまで、これでもかという程、有権者の一票の権利を救う為の配慮には事欠きません。
それ自体悪いことではないのですが、問題なのはその厳密性にこだわるのなら、もっと根本にあるより重要な選挙区の定数や区割りについて抜本的に対処しようよ~、というわけです。これは明らかに選択性が機能していない状態であって、早急に問題の入口に立ち返る必要があります。

経験豊富な社会人集団であるはずの国内一流メーカー社員に及ばす、
国民の代表である国会議員でさえも、陥ってしまう厳密性の罠。

これまで「答えのない問題」への訓練をほとんど受けてこなかった新入社員の方々が、それらの問題に最初は戸惑い、道に迷うのは当然です。ただ、そんな無駄足を減らし、問題の核心ときちんと対峙する為にも、学生時代とは発想を変えて問題に向き合う必要があることを、自戒を含めてアドバイスしたいと思います。

そんじゃーねー!

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